[技術解説]

実績データの即時把握に工夫、海外事業所の短期立ち上げにも配慮─ERP製品動向をつかむ

今、改めてERPの価値を見直す Part4

2011年7月19日(火)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

昨今のERPパッケージは、海外製品はもとより国産製品においてもグローバル経営を見据えた機能強化が目立つ。 Part4では主要なERPパッケージの最新動向をまとめた。折川 忠弘[ 編集部 ]

企業のグローバル展開が加速する中、ERPには「リアルタイム性」や「海外事業所の短期立ち上げ」が求められるようになってきた。ベンダー各社はどのように応えようとしているのか。最近の動きを整理しよう。

処理の高速化に向け周辺製品の拡充を加速

大手ベンダーは今、ERPパッケージの使い勝手を高めること、その中でも高速な処理・分析を目的とした周辺ハード/ソフトの拡充に力を注いでいる。

ERP市場で常に先頭集団を走ってきたSAPは、インメモリー技術の取り込みやモバイル対応に余念がない。例えば、「High-Performance Analytic Appliance(HANA)」。これはインメモリー処理のカラム型DBを搭載したアプライアンスで、ERPで扱うデータを高速に分析処理することで、営業現場や製造現場の意思決定支援にまでERPのカバレッジを広げる狙いがある。ストレージやDBMSのコストを下げる狙いもあるとされる。

モバイル対応も加速させている。モバイル端末向けのソフト開発環境「Sybase Unwired Platform 2.0」、およびSAP製アプリケーションにアクセスするミドルウェア「SAP NetWeaver Gateway」を発表。HANAと組み合わせて、ERPにモバイルからアクセスし、場所や時間を問わず必要な経営データをリアルタイムに閲覧するといったことを可能にする。

オラクルもデータ処理を高速化するソリューションの拡充を進めている。例えば「Oracle Coherence」。これは安価なIAサーバー群で仮想的な共有メモリー空間を確保し、キャッシュ技術などと組み合わせてデータを高速処理する製品だ。新版では「Elastic data」と呼ぶ機能を追加。SSDやSANなどの外部ディスクも透過的かつ高速にアクセスできるようにした。大量データのリアルタイム処理に向く。

なおオラクルには、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を基軸にゼロから設計した「Oracle Fusion Applications」の本格展開も控えている。国内での投入時期は未定だが、今後が注目されるところだ。

得意分野に軸足
強化進める大手国内ベンダー

外資勢を迎え撃つ国内ERPベンダーも、華々しい発表こそないものの、着実に機能を強化している。

富士通マーケティングが主に中堅企業向けに展開するGLOVIAシリーズでは、会計ソリューション「GLOVIA/SUMMIT」、詳細なデータ分析などを担う「同/MI」、製造業向け生産管理の「glovia G2」といった製品の機能拡充が目新しい。例えばSUMMITには会計専用DWHという位置づけで「FDWH」を装備。個別取引明細データを蓄積し、財務会計と管理会計の両面で処理/分析できるよう配慮する。「明細データを500万件/月から1億件/月まで拡張する予定だ」(ソリューション事業本部 渡辺雅彦副本部長)。

NECの「EXPLANNER」は、IFRS対応を念頭においた機能強化が中心だ。任意のセグメント別に財務諸表や配賦、予算などを管理する「Ai会計(強化版)」、キメ細かい減価償却を勘案した固定資産管理パッケージ「Fa」などが代表例となる。

日立製作所は、主に製造業向けに提供するGEMPLANETにおいて、グローバル展開を支援することに焦点を当てる。例えば、中国に新規工場を立ち上げる企業を想定し、機能を絞り込んで短期導入を図る「GEMPLANET/WEBSKY-Light」を発表。MRP(資材所要量計画)などの機能を省いて簡素化した結果、「最短1カ月で導入が可能だ」(エンタープライズパッケージソリューション本部 GEMPLANETソリューション部 竹山雄一部長)。

クラウド化急ぐ国産ERP
事業所の早期立ち上げ支援

国内ERPベンダーの中には、クラウド対応を謳う動きも目立ってきた。

ワークスアプリケーションズは3月、Amazon EC2を活用した勤怠管理「COMPANY 就労・プロジェクト管理」、ワークフロー「COMPANY Web Service」を発表。人事情報はオンプレミスで、申請や勤怠管理はクラウドで運用するハイブリッド型を採用することで、セキュリティに対する懸念を払拭する。

エス・エス・ジェイは、「SuperStream」が備える一般会計や管理会計、債権管理などの機能をSaaSで提供。クレオマーケティングも2月に発表したクラウド型サービス管理「ZeeM サービスデスク」の投入を機に、「今後は海外展開する企業向けの製品/サービスにも注力したい」(代表取締役社長 林森太郎氏)。

アビームコンサルティングのプロセス&テクノロジー事業部 中野洋輔FMCセクターリーダーは、「グローバル展開する企業にとって、海外拠点をいかに迅速に立ち上げられるかが重要性を増している。クラウドという選択肢が現実味を帯びてきた」と指摘する。

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