企業の情報システムは大きな転換期を迎えようとしている。 これまで業務の効率化や自動化を目指してきたITは、 利益に直接寄与する存在へと進化するときだ。 そのためには、業務プロセスを含めて企業ITの全体構造を見直す必要がある。
レガシーからクライアントサーバー、さらにWebシステムへ。あるいは手組みからパッケージ利用へ。この四半世紀の間、企業ITは個別システムの追加や改修で世代を上げてきた。作ったシステムはそのまま残し、そこに新システムをどんどん“増築”する繰り返し。その間、IT全体の構造を見直す動きはなかった。
企業内にはメインフレームやサーバーが混在。そこでは、多種多様なソフトウェアが稼働する。結果、運用の手間やコストは徐々に、だが確実に増した。どこかに追加や変更を加えたときの影響範囲を見極めるのも難しくなった。
それでも、これまでは何とかなった。システム間のデータ連携は手組みのプログラム、あるいは必要に応じてEAIツールを利用。システムごとにUIはバラバラだが、そこは使い手に慣れてもらう。そんな対策で十分乗り切れた。しかし、パラダイムは変わろうとしている。
モバイル機器に搭載された位置情報システムやRFID、カーテレマティクスといったセンシング技術で収集したデータをリアルタイムでITに取り込み、合理的で価値ある世界を創り出す。そうした「Cyber Physical Systems(CPS)」が、近い将来、現実になるのは確実だ。社会インフラの文脈で語られがちなCPSだが、企業にも大きな影響をもたらす。大量に発生する情報を有意なものに加工すれば、新たなビジネスチャンスにつなげられる。その活用の優劣が、企業競争力を左右するだろう。「これからは、テクノロジがビジネスを駆動するようになる。トヨタとマイクロソフトのクラウド事業での提携は象徴的」(ガートナー ジャパン リサーチ部門 バイスプレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏)。
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