[市場動向]
Androidタブレット端末の業務利用を多様なシーンで提起─Tablet Solution Award 2012受賞製品の特徴
2012年4月20日(金)折川 忠弘(IT Leaders編集部)
本誌を発行するインプレスビジネスメディアは2012年2月28日、「Tablet Solution Award 2012」の表彰式を開催した。Androidタブレットの企業向けソリューションを選出するコンテストで、完成度や独自性などを基準に審査。エントリー企業142社の中から、グランプリ(1社)、協賛企業賞(3社)、特別賞(3社)を選んだ。
インプレスビジネスメディアは2012年2月28日、「Tablet Solution Award 2012」の表彰式を開催した。Androidタブレットの企業向けソリューションを選出するコンテストで、完成度や独自性などを基準に審査。エントリー企業142社の中から、グランプリ(1社)、協賛企業賞(3社)、特別賞(3社)を選んだ。
[グランプリ]
顧客満足度向上とコスト削減を両立
グランプリを受賞したのは、日本ユニシスのタクシー配車システム「smar-taxi」。カーナビ兼車載用無線機として使う配車システムで、顧客からの配車依頼に対して最適なタクシーを迅速に割り当てられる。タブレット端末のGPS機能を活用することでタクシーの現在地を特定し、顧客から最寄りのタクシーの検出と配車指示までを自動化する。従来の配車システムは指示を出すまでに1分程度要していたが、 smartaxiなら最短3秒で指示を出せるという。
日本ユニシス「smartaxi」の画面
初期導入費を抑える効果も見込める。専用カーナビ端末の場合、1台あたり20万~30万円の費用がかかるが、Androidタブレット端末ならば1台あたり5万円程度で済む。20万円するタクシー専用無線機も、携帯電話網を活用すれば不要となる。
タクシー業界は現在、アナログ無線からデジタル無線への移行期にある。アナログ無線は2016年6月に終了する予定で、各社はデジタル無線を用いた配車システムの導入を迫られている。しかし、導入費用や導入期間の長期化などを理由に、思うように移行が進んでいないのが現状だ。
日本ユニシスはこうした課題に着目し、デジタル無線網ではなく携帯電話網を用いた安価な配車システムの価値を訴求する。「smartaxiは、デジタル無線化へ向かうタクシー業界に新たな価値を投じるソリューションであると位置付ける。コストメリットを全面に打ち出し、Androidタブレットを用いたシステム移行を促したい」(流通第二事業部 事業部長 齊藤昇氏)。
日本ユニシス 流通第二事業部 事業部長 齊藤昇氏
[協賛企業賞/特別賞]
業務に根付いた機能追求
協賛企業賞や特別賞を受賞したソリューションの中には、特定業務向けに機能を絞り込んだものが目立つ。シエロアスールの動画配信アプリ「SMASSh」、カディンチェのパノラマ写真を活用したバーチャルショップ構築アプリ「PanoPlaza」、アイエスゲートの多言語対応問診アプリ「ヘルスライフパスポート」が受賞した。タブレット端末の特性を活かしつつ、斬新な画面表示や新たな市場を創出し得る期待感などが評価された。
「SMASSh」は、動画と画像などの異なるコンテンツを画面を分割することで同時に表示できるアプリ。一方の画面で商品を案内する資料を表示し、 もう一方の画面は商品の利用法などを動画で分かりやすく解説するといった使い方が可能だ。営業担当者が自社商品を顧客に案内する際に利用できるほか、動画 を加えたセミナー資料や社内研修用資料などの作成にも役立つ。動画の再生スピードに合わせてプレゼン資料をスライドさせる同期設定を、簡易な操作で行える 点も高い評価を得た。
シエロアスール「SMASSh」の画面
「PanoPlaza」は、360度のパノラマ写真を活用して店舗や施設などをバーチャルに訪問できるアプリ。写真内に動画やテキストを付与し、画面をタップするとポップアップで詳しい情報などを表示できる。バーチャル空間を自由に歩き回れるため、不動産物件や結婚式場などの様子を紹介する用途に向く。ECサイトにPanoPlazaを埋め込むことで、サイト利用者はあたかも店舗で買い物をしているかのように商品を購入できる。
カディンチェ「PanoPlaza」の画面
PanoPlazaを選出した、協賛企業のソニーマーケティング 法人営業部 法人パートナー営業部の大西和宏氏は、「現地を訪問しているかのような臨場感を見事に再現した。駅や博物館、空港などの様々な場所で利用を見込めることから、新たなビジネスを生み出す可能性を秘めている」と評した。
「ヘルスライフサポート」は、医療機関を訪れた外来患者が、タブレット端末を使って症状などを入力する問診支援アプリ。34カ国語を使い分けて問診内容を表示し、日本語を話せない外国人でも安心して医療機関を受診できるようにした。日本人が海外へ渡航した際には、現地の医療機関に症状や病歴などを正確に伝えることもできる。
アイエスゲート「ヘルスライフパスポート」の画面
アイエスゲート 代表取締役の小林俊哉氏は、「患者が適切な処理を受けられるようにするには、医師との密なコミュニケーションが不可欠である。言葉の障壁があっても正確な情報を伝えることが大事と強く感じ、開発に踏み切った」と製品化の経緯を振り返った。
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