ビッグデータ時代に企業経営のカギを握る 「情報分析力」とそれに基づく「実行力」 これまでの不可能を可能にする情報分析アプローチとして、多数の企業がビッグデータの活用に期待を寄せている。日本IBMのセッションに登壇した、同社 理事 インフォメーション・マネジメント事業部長の塚本眞一氏は、IBMにおけるビッグデータの定義を示した後、海外の代表的な先進事例を紹介しながら、ビッグデータ時代に企業に求められるアクションを説いた。
セッションの冒頭、塚本氏は今日のデータの爆発的な増大を示す数字をいくつか示した後、IBMにおけるビッグデータの定義を、「3つのV」(Volume:容量、Variety:種類)、Velocity:速度)の観点から次のように説明した。
ビッグデータの実態を示す「3つのV」
理事
インフォメーション・マネジメント事業部長
塚本 眞一 氏
「企業が扱うデータの容量は、規模が従来とはまるて異なっている。種類については、構造化データに加えて、動画や地理情報など多様な非構造化データを扱うようになっている。そして速度の観点では、データを収集・処理するタイミングがほぼリアルタイムになっている。IBMは、この3つのVが拡張し続ける状況こそがビッグデータだととらえている」(塚本氏)
続けて塚本氏は、企業が市場の変化を読み取ってタイムリーにビジネスを展開していくのに、企業内に蓄積された既存のデータを分析するだけでは難しく、ビッグデータから、ビジネスに有用な洞察を得るための仕組みを構築する必要があると指摘した。「ビッグデータへの精緻な分析から洞察を得て、その洞察から俊敏かつ正確な行動を起こす。行動のフィードバックを蓄積して、そこから新たな洞察を得る。このサイクルを確立し実践できる企業だけが厳しい競争を勝ち抜くことができる」(塚本氏)
ビッグデータから有用な洞察を得るための技術/ソリューション
ビッグデータ活用の先進事例として、塚本氏は、デンマークの風力発電機メーカー、ヴェスタス・ウインド・システムズと、カナダのトロント大学/オンタリオ工科大学(UOIT)のプロジェクトを紹介した。前者は3つのVのうち、特に容量と種類が拡大したデータを対象とした分析処理(ディープ・アナリティクス)の事例で、後者は速度と容量が極端に高いデータを対象とした分析処理(リアクティブ・アナリティクス)の事例である。
風力発電機の発電量と機器の寿命は設置場所によって大きく変わることに着目したヴェスタス社は、気象情報や地形データ、衛星写真などの非構造化データを含む膨大なデータをリアルタイムで分析するシステムをIBMの汎用IAサーバとHadoopベースのデータ分析基盤「IBM InfoSphere BigInsights」を用いて構築した。
「新しい分析システムは、従来3週間ほど要していた分析をわずか15分に短縮した。どの競合メーカーよりも迅速でかつ精度の高い設置場所を顧客に提案できるようになったことで、現在、ヴェスタス社は市場で連戦連勝中にある」(塚本氏)
一方、トロント大学とUOITは、IBMとの共同プロジェクトで、情報ストリームのリアルタイム処理を可能にする「IBM InfoSphere Streams」を活用した新生児集中治療室(NICU)の予測分析システムを構築。重症の未熟児に装着したセンサーから、毎秒1000項目超に及ぶバイタルサインを取得して罹患リスクとの相関関係を分析することで、従来よりも6時間〜24時間早期に処置を施せるようになったという。
塚本氏は「IBMはグローバルで培ってきた経験と知見をもって、ビッグデータからビジネス価値を引き出すアプローチを提供することで、ユーザー企業の皆さんと共に価値の高いビジネスを生み出していきたい」と語り、講演を締めくくった。
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