[イベントレポート]

開発と運用の溝を埋める米IBMの秘策「DevOps」─IBM Innovate 2012

IBM Innovate 2012 2012年6月3日〜7日/米オーランド

2012年8月2日(木)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

米IBMは2012年6月3日から7日、米オーランドで年次イベント「Innovate 2012」を開催した。ソフトウェア開発製品群「Rational」の技術動向や最新事例を紹介する場で、会期中はビジネススピードに追従してソフトウェアを開発/展開することの重要性を終始訴求し続けた。

ソフトウェア開発においては、開発部門と運用部門に大きな溝がある。この溝を埋めない限り、迅速にソフトウェアを開発/展開することはできない─。Rational部門ゼネラルマネージャのクリストフ・クレックナー氏が基調講演で言い放ったこの発言は、IBMが今年のInnovateで何を伝えようとしているのかを端的に物語っている。

社会のニーズが多様化する中、企業はいかに市場に合致するソフトウェアを開発し、競合他社に先駆けて投入できるかが求められる。しかし、スピードばかり追求しては品質を損ないかねない。不具合が多発するようでは運用部門の負担が増すだけだ。そこで「開発部門と運用部門の双方が目指すべきソフトウェア像を共有し、無駄のない効率的なソフトウェア開発に取り組む必要がある」とクレックナー氏は説く。

写真1 基調講演の会場の様子。約2000人の聴衆が詰めかけた
写真1 基調講演の会場の様子。約2000人の聴衆が詰めかけた

開発/運用部門を連携しソフトウェアの展開を加速

写真2 Rational部門ゼネラルマネージャのクリストフ・クレックナー氏 写真2 Rational部門ゼネラルマネージャのクリストフ・クレックナー氏

IBMはこれまで、開発部門と事業部門間の溝を取り除くことに注力してきた。その解決策の1つがアジャイル開発だ。開発の進捗状況を可視化し、手戻りの少ない適応力のあるソフトウェアを開発するための手法で、同社はアジャイル開発を通して、事業部門が求める要件を機能として実装しているのかをチェックできる体制の必要性を訴求してきた。

クレックナー氏は、こうした考えを開発/運用部門間にも適用すべきだと指摘する。そのための施策として「DevOps」というコンセプトを打ち出した。これは、「Development(開発)」と「Operation(運用)」を組み合わせた造語で、これまで十分な信頼関係を築きにくかった開発/運用部門の緊密な連携を重視しようというものだ。DevOpsを実践することで、「ソフトウェアの保守に割り当てる予算を削減し、新規ビジネスを支援するソフトウェア開発に予算を集中投下できる」(同氏)。アジャイル開発とDevOpsを組み合わせれば、「ソフトウェアのライフサイクルを、開発部門だけで閉じずに事業/運用部門まで含めて管理できる。ソフトウェアがどんなビジネスで使われ、どのように運用しているかを把握でき、より実践的なソフトウェアを開発するのに役立つ」(同氏)。なお、DevOpsはIBMが独自に提唱するものではなく、その必要性に気づいた一部のユーザー企業が取り組み出した、ソフトウェア開発の新たなトレンドである。

部門間の連携強化で開発効果を高める企業も

開発部門が運用部門や事業部門と密に連携することで効果をあげた企業も出始めている。

通信事業を手がけるエリクソンは、各部門の進捗状況をダッシュボードを使って可視化。レポートを作成して進捗を報告するといった手間を省き、ソフトウェアの開発や運用といった本来の業務に集中できる体制を整えた。

韓国大手のサムスン電子は、スケジュールの透明性を高めることで、遅延なくソフトウェアを開発できるようにした。その結果、開発要員の満足度も25%向上したという。

そのほか、金融業のオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は、開発要員を増やさずにソフトウェアの生産性を30〜35%向上し、英OLMシステムズはソフトウェアのテスト作業を効率化することで品質に及ぼす影響を77%改善した。

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