小規模ながらも独自技術に強みを持った専業ベンダーがしのぎを削る群雄割拠の時代が過ぎ、今日、ストレージ市場の主導権を握るのは大手システムベンダー。各社とも次世代ITインフラの中核コンポーネントに位置づけて性能・機能の強化を図っている。以下では、主要ベンダー4社のストレージ戦略を概観する。
主要ベンダー動向 1 EMCジャパン
ビッグデータに軸足、格納・管理・活用の網羅へ
巧みな買収によって、ストレージ専業ベンダーから情報インフラ分野の総合ベンダーへの転換を推し進めるEMC。しかし祖業であるストレージを軽視しているわけではもちろんない。大規模ミッションクリティカル用途向けのSymmetrixシリーズ、中堅向けのVNXシリーズを中心に、幅広い製品ラインを展開する。例えば、容量や処理性能を柔軟に変更できるのが特徴のスケールアウト型NAS「Isilon」や高速アクセスが持ち前のフラッシュストレージ「Xterm」などだ(これらは買収で加えた製品/技術である)。
これらの汎用製品に加えて、データ重複排除を備えた「Data Domain」と「Avamar」の両バックアップ製品、分散処理基盤Hadoopのディストリビューション「Greenplum HD」が加わったDWH用データベース「Greeenplum」、マイクロソフトSQL Serverに特化した「EMC FAST Cache」など用途特化の製品群も揃える。
クラウドストレージ(オブジェクトストレージ)も提供している。「Atmos」がそれで、EMCがクラウドサービスとして提供するほか、EMCのCelerra、CLARiX、Symmetrixといったストレージを使って、プライベートのクラウドストレージを構成できる。今後も自社開発や買収などにより、ストレージ製品を強化する。3月には、すべてをフラッシュ技術で構成したスケールアウト可能なストレージアレイ「XtreamIO」を開発中であることを公表した。
主要ベンダー動向 2 日本IBM
ワークロードごとに特化したシステムを用意
IBMは、ストレージの製品ビジョンとして「Smarter Storage」を提唱している。単なるキャッチフレーズとも言えるが、ストレージの導入・運用に伴う複雑性の排除を追求する考えを表明したものだ。その一環として、ユーザー企業の規模や用途に即したラインアップを整備している。
ハイエンド領域では、自動暗号化ドライブを搭載してセキュリティを高めた「DS8870」、分散アーキテクチャにより並列処理しつつ管理性を高めた「XIV」、2012年9月に買収によって得たフラッシュストレージ技術で、高スループット/低レイテンシを追求した「Texas Memory Systems」がある。
ミッドレンジでは、「Storwize V7000 Unified」が注目機種。データをリアルタイムに圧縮する「Integrated Real-Time compression」と呼ぶ機能、SSD/HDDの混在構成をシングルプールとして管理し性能を自動最適化する「Easy Tier」機能などを搭載している。その下のエントリ向けには「Storwize V3700」がある。最大180TBの容量を持ち、複雑性の排除に向け「自己最適化」のためのソフトウェア群を搭載する。
主要ベンダー動向 3 日本ヒューレット・パッカード
積極買収でラインナップ拡充、“エッジな技術”を全面に
この5年間でIBRIX、3PAR、レフトハンド・ネットワークスといった有力ストレージ専業ベンダーを相次いで買収してきたHP。2011年6月には全製品を「HP Storage」ブランドに統合・再編した。
しかし今のところ統合したのはブランドだけで、買収で得た製品のユニークさは変わっていない。買収以前からの長期ユーザーも多いのが特徴だ。
製品ラインを見ると、ハイエンドでは、高信頼性・高可用性が求められるプライベートクラウドの構築に向けて、シンプロビジョニングと自動階層化管理を組み合わせた「Smart Tiers」を搭載した「P9500 Disk Array」、柔軟な拡張が可能なスケールアウト型アーキテクチャの「3PAR Utility Storage」が中核製品と言えるだろう。
ミッドレンジでは、仮想ストレージ・プール上に仮想ディスクを構築し高い処理性能と容量効率を共に実現する「P6000 Enterprise Virtual Array」がある。スモールスタートからのスケールアウト型拡張に向いたクラスタ・ストレージで、SSD搭載モデルも加わった「P4000 SAN Solution」も注目株の1つだ。
●Next:ハイエンドとミッドレンジで打ち出す日立ストレージの強み
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