パスワード問題を取り上げた連載記事『崩壊の危機に瀕する「パスワード問題」』では、サイバー社会における本人認証の役割と問題点を論じてきました。本連載では視野を少し広げ、社会生活における本人認証の役割と意義について議論を進めます。第1回目は歴史と法的側面「本人認証」を考察します。
本連載を進めるに当たり、別の連載記事『崩壊の危機に瀕する「パスワード問題」』で解説した「個人識別」と「本人認証」の相違について改めて確認しておきましょう。
「個人識別」とは、対象とする人を特定の個人と認める行為です。肉体的特長や所持物が代表的な識別手段になります。一方の「本人認証」とは、サービス提供を受ける資格を持っている当該個人であると主張する人の真正性を確認する行為です。代表的な識別手段としては、パスワードが用いられてきました。
記憶の共有から電子化へ変わった本人認証の歴史
本人認証の変遷について時代を追って考えてみましょう。
(1)特定の本人認証手段を意識する必要のなかった有史以前
狭い共同体や、その周辺のみで社会生活が成り立ってきた時代には、本人認証手段などを特別に意識する必要などなかったと推測されます(図1)。当人が誰であるかは周囲の全員が知っているからです。
この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
会員登録(無料)が必要です
【次ページ】
- 1
- 2
- 3
- 次へ >
バックナンバー
- 【第4回】社会生活と経済活動に与えるインパクト(2014/01/09)
- 【第3回】大災害時の本人確認に求められるもの(2014/01/08)
- 【第2回】社会的事象としての本人認証(2014/01/07)