[社会生活における本人認証の役割と意義]

【第4回】社会生活と経済活動に与えるインパクト

2014年1月9日(木)鵜野 幸一郎(日本セキュアテック研究所・代表)

誰にでも容易に使いこなせ、確実で信頼できる本人認証の基盤が確立できれば、第3回に考察した大災害発生時の被災者救援や社会復帰だけでなく、広範な社会生活や経済活動の領域における健全で持続的な発展に貢献できると期待されます。今回は、本人認証基盤が現代社会にもたらすインパクトを考えてみましょう。

 本人認証基盤が現代社会に与えるインパクトしては、(1)ID連携サービスの安全運用、(2)パーソナルデータの保護と活用、(3)クラウドの安全利用、(4)ウェアラブル端末の普及促進、(5)安全で快適なスマートホーム、(6)手ぶらショッピング、(7)テレワークの拡大、(8)日本発のセキュリティ産業育成、(9)既存パスワード認証の安全利用、などが考えられます。それぞれを少し詳しくみてみましょう。

(1)ID連携サービスの安全運用

 「一つの籠に余りに多くの卵を入れるものではない」また「マスターパスワードはユニークで特に良質なものでなければならない」という2つの鉄則を満たすID連携が望まれます。マイナンバー・マイポータル登場を前に国民的規模で検討されているトラストフレームを安全運用するための基幹技術になり得ます。

 ID連携サービスは、多くの事業領域での活用が期待されています。利便性を大きく高める一方で、脆弱性が1点に集中するという側面もあります。それだけにID連携サービスでは、マスターパスワードの重要性が際立ってきます。すなわち、個々の利用者が良質なパスワードをマスターパスワードとして使用できるようになることがトラストフレームの安全運用の前提になります。

(2)パーソナルデータの保護と活用

 医療データなど高度な機微個人情報の活用においては、データ所有者がその利益の還元を受けるためには1対1の通信が可能な匿名化技術が必須です。匿名化管理を必要とするような高度な機微情報には、最も確実で信頼できる利用者認証が不可欠になります。

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