[社会生活における本人認証の役割と意義]

【第3回】大災害時の本人確認に求められるもの

2014年1月8日(水)鵜野 幸一郎(日本セキュアテック研究所・代表)

大災害の発生を想定すれば、中枢機能の維持・復元について真剣に検討しておく必要があります。通信網の多重耐震化やデータの遠隔地分割保管については各専門家の議論に期待するとして、今回は本人認証では何が問題となるかを考察していきましょう。

 1995年に発生した阪神・淡路大震災でも2011年の東日本大震災でも、現地での被害は甚大だったものの、日本という国全体でみれば中枢機能がほぼ無傷だったことが不幸中の幸いでした。しかし、やがては太平洋沿岸を襲うと想定されている東海・南海大地震大津波では事情はまったく異なってきます。日本という国の中枢機能をどう維持し復元するかを考えておかねばなりません。

大災害発生時に求められる本人認証

 大災害に遭遇し、パニックの中で財布も免許証も手帳も携帯電話も失い、周囲に身元を証明してくれる人が誰もいない。こうした状況下での本人認証を考慮しておく必要があります。一切の所持物を失ったところから出発し、身体の負傷も視野にいれれば、記憶照合が最も頼りになる本人認証手段になることは言うまでもありません。

 着の身・着のままとなる状況を想定してみましょう。大地震が起り、大津波が広く東京湾から大阪湾までの太平洋沿岸を襲ったとの想定です。

 出張中に津波に遭遇したA氏は、パニックの中で財布も免許証も手帳も携帯電話も失った。周囲にA氏の身元を証明してくれる人はいない。もし面識のあった人がいたとしても、地震による負傷で顔が変わってしまっていて判別がつかない。

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