EMCジャパンは2014年3月26日、異機種ストレージの混在環境を有効活用するソフト「ViPR」(ヴァイパー)の最新版「ViPR 1.1」を発表、同日より提供を開始した。ViPRは、仮想化技術などを用いてタイプやベンダーが異なるストレージを論理的に束ね、サーバーに対して一元的にボリュームを割り当てるもの。同社のコンセプト「Software-Defined Storage」を具現化するプラットフォームである。
「ハードウェアにとらわれないインフラ」の意味
Software-Defined Network、Software-Defined Datacenter、そしてSoftware-Defined Storage…。ここ1、2年で耳目にする機会の増えた“Software-Defined”というキーワード。いずれも抽象化/仮想化によるリソースのプール化を図ることで、ヘテロジニアスな環境においても、ハードウェアにとらわれない一元的なインフラ管理/運用の実現を目指す場合に使われる。
EMCの場合、グループ企業であるVMware、Pivotalとも連携し、エンタープライズにおけるインフラリソースすべてのSoftware-Defined、すなわち"Software-Defined Enterprise"をゴールとしており、「シンプル、オープン、拡張可能」をコンセプトとするViPRはその基盤となるアーキテクチャといえる。
こうしたソフトウェアによるインフラコントロールが求められるようになった背景には、やはりデータ量の爆発的な増加と、それに伴うビジネス環境の劇的な変化がある。渡辺氏は「企業が扱うべきデータの増大に加え、それらのリアルタイム解析に対する要求も強まり、クラウドへのデータ移行は加速する傾向にある。だがエンタープライズのインフラは規模やセキュリティを考えると急激に軸足を移すのは難しい。クラウドベンダーへのロックインに対する懸念もある。こうした現状に最適なのは、ハイブリッドな環境で機能するSoftware-Definedなインフラ」と意義を強調する。
もっともViPRもまだ発表されから1年未満の製品だけに、まだ進化の途上にある。競合ベンダーのストレージも扱えるとしているが、現状ではEMC製ストレージが中心で、他社製品ではNetAppの一部ラインナップにとどまっている。
ViPRの強化/改善を図るため、EMCは一部のユーザー企業やパートナー企業などを対象に、グローバルで早期導入プログラムを実施してきた。その1社である三菱電機情報ネットワークの常務取締役 セキュリティ・プラットフォームサービス事業部 事業部長 鈴木壽明氏はViPRについて「個別のツールを使わなくてもストレージリソースの抽象化に容易に対処できる。また、高速大容量のサービス、中速中容量のサービス、といった具合にサービスカタログを分けやすくなる点も高く評価している。属人性を排除した自動化がしやすい点もメリットが大きい。一方で、評価の結果、ストレージの負荷状況を可視化したダイナミックな割り当て、安定性の向上、性能を考慮したボリュームの拡張といった要望をエスカレーションさせてもらった。これらの一部は、今回のViPR 1.1に反映してもらっている」と評価している。
データ量の増大によるクラウドへの移行が急速に進む中、ストレージの仮想化はますます重要なテクノロジーとなる。需要の増大に対し、ViPRがスピードを落とさずに進化を持続できるかが注目される。