[市場動向]

あべのハルカス、“レベニューシェア”でITを調達、パナソニックISがクラウドサービスとして提供

2014年7月7日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

大阪の新ランドマークである「あべのハルカス」。高層階の展望フロア、ならびに16階の美術館の入退場管理に、ある画期的なシステムが使われている。その概要や、そもそも導入に至った背景などを関係者に聞いた。

チケットの発券枚数に応じて課金

写真3 入場ゲートに使われている機器
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 実際にどんな仕組みなのか。あべのハルカス(近畿日本鉄道)が調達したのは、チケット発券機や入場ゲート(写真3)などの物理設備とシステムを一体にしたサービスだ。あべのハルカスはこれら一切を所有せず、設備も含めてパナソニックISが提供する。構成そのものはシンプルで、あべのハルカスに設置した発券機や入場ゲートなどの機器(中身はコンピュータ)を、ネット経由でパナソニックISのデータセンターにあるサーバーに接続。入場者のカウントや売り上げ集計を行い、あるいはゲートの状況をモニタリングしながら適切な案内をデジタルサイネージに表示する。

 レベニューシェアの基準は「チケットの発券枚数です」。配分比率は非公開だが、5年程度の運用費を含めて買取で調達する場合の総費用と、年間の想定来場者数から得られる収入×5年という数字から、チケット1枚当たりのシステム費用(=支払い額)を決めている模様だ。実際の来場者数が想定から大幅にずれると、どちらかの負担が過大になるため、「来場者数の推移を見ながら1年ごとに見直す契約です」(同)。

 この契約形態が、あべのハルカスはもちろん、パナソニックISにも来場者を増やす努力を促す。「一例がSNSによる告知や、Webサイトの改善提案です」(パナソニックISソリューションビジネス本部の河原 功システムソリューション事業部長)。パナソニック・グループ各社の利用も促進しているという。

 それでも来場者数が下振れする可能性はある。そこでパナソニックISは。システムや設備のリソース利用面でも工夫した。情報システム基盤には所有するBladeFrame(イージェネラ)というサーバーと3Par(日本HP)というストレージを使用。いずれもシステム資源を柔軟に調整できるのが特徴であり、処理量に応じて弾力的にリソースを増減できる。加えて会計処理にPCAクラウド(ピー・シー・エー)を使うなど、外部のクラウドサービスを利用。リソースの固定化を防いでいるのだ。

写真4 チケット発券機
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 それだけではない。来場者数が想定を大きく下回る──POS端末やゲート、発券機などの設備が余剰になる──場合に、それらを別の施設や数日間のイベントに転用できるよう、機器類を転用可能なものにした(写真4)。施設に設置する機器とITをレベニューシェアで提供することを称して、同社は「ファシリティ・クラウド」と呼んでいる。ここまでやって「レベニューシェアが可能になりました」(同)。

 開業後数カ月、問題は何もなかったのか? 来場者数は、好調に推移している。「開業以来、5月末までの間に展望台70万人、ハルカス全体では1124万人の来場がありました。いずれも当初計画を上回っており、平日でも展望台に上る行列ができている状況です」(近鉄の福田氏)。

 しかしシステム面で軽微な問題もあった。「設置している機器がオフラインになるトラブルが起きました。通信回線ではなく、ビル内の機器の障害が原因でした。それを見越して、オフラインでもチケット発券が可能な仕組みですので実質的な問題はないのですが、画面がフリーズして窓口の現場は一瞬戸惑ったようです」(同)。

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