米Nationwide Insurance、X PRIZE財団のCEO、そして米テラデータ(Teradata)の経営陣。テラデータのユーザー会が主催する「PARTNERS 2014」の基調講演は実に盛りだくさんの内容だった。一体何が語られたのか。テーマは「Data Driven(データ駆動)」だったが、それ以上に「Critical Feeling Driven(危機感駆動)」があるように感じられた。
Teradata LabsのPresidentであるScott Gnau氏
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・世界の人口は72億6000万人、そのうち30億人がインターネットを使っている。今日、そこから生まれるデータを処理しなければならない。しかもデータ量は2年ごとに倍増するペースで増えている。我々は様々な技術を駆使して、データの混乱をまとめようとしているが、決して簡単ではないし大変でもある。
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・2008年から2012年の間に49億ドルがビッグデータ企業に投資された。2013年は1年間で36億ドルと増加し、ビッグデータ関連技術や製品はカオス(混沌)状態だ(図5)。Cloudera、Hortonworks、Apache Drill、Cassaandra、InfiniDBなどのほか、SAP HANAなど、様々なタイプの多数のソフトウェアが生まれている。
・これは楽しみでもある。様々な動物(ソフトウェア)が勝手に走り回っている状態を統合できれば、多くのことを実現できるからだ。「Teradata Unified Data Zoo」というビデオを見て欲しい。テラデータは、ビッグデータのカオスを整然とした世界に移行させつつある。
・アーチェリーで勝利する方法は何か?「構えて(Ready)、狙って(Aim)、矢を射る(Fire)」だけでは不十分。風や気温はどうか。的の大きさは?。場所の高度なども含めてあらゆることを知り、準備することが大事だ。逆にそれができれば成功する。きちんとやる人が勝つ。
・ビジネスも同じ。いろんなソリューションを実施しているが、もしかすると構えて矢を放つだけ、狙うだけかも知れない。上手くいけば当たると考えていないだろうか。そうではない。あらゆることを知る技術はある。QueryGrid、Loomなどだ。それらを使いこなし、「Ready、Aim、Fire」を実践して欲しい。これらら3つを順序立てて確実に実践することが大事である。
Marketing ApplicationsのPresidentであるDarryl McDonald氏
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・顧客の体験を向上させることが鍵だ。そのためにはシームレスなマーケティングのためのエコシステムが欠かせない。すでに多くの企業が、それに向けた取り組みを実施している。「Ready、Aim、Fire」ならぬ、「Ready、Aim、Engage」である。
・米P&Gは1500以上のWebサイト、10億人の顧客を持つ。その情報を統合する「ワン・コンシューマ・プレイス」を開発し、商品開発に活かしている。顧客の将来にわたるニーズを把握し、グローバルで展開する野心的な試みである。
・レンタカー会社のHertzは、顧客のレンタル経験をパーソナル化し、フライトの場所に合わせて好みの車を手配する。車が気に入らなければ携帯から変更できる仕組みもすでにある。
・1698年創業の老舗酒商である英Berry Bros. & Ruddは、4000種類のワインを4万5000人の得意客個々に提供する。Analyticsを源泉に、最適化したeメールを送付している。ワインクラブを組織し、ワインセラーも顧客に合わせて用意する。カジュアル衣料の米American Eagle Outfittersは店舗、Webの顧客データを統合し、データ駆動のマーケティングを展開している。
・近い将来、すべてがスマートになる。注目するべき動きの1つはウェアラブルデバイスだ。腕輪や靴、ペットにもチップが装着されていく。ロボットもそうだ。自動運転車はロボットそのもの。ロボットにマーケティングする時代が来るかも知れない。可能性は無限大である。
既存ビジネスが破壊させる危機感がデータ分析に走らせる
PARTNERS 2014の基調講演、いかがだっただろうか?
「米国企業はともかくデータが好き。見るのも分析するのもだ。日本企業はデータよりも経験や勘を重視する」−−。こんな指摘が先日、日本データマネジメント・コンソーシアムの会合であった。データ分析への取り組みの違いを議論する中で出てきたものだ。
なるほどと納得感はある。だが、それだけではないようにも思う。「デジタル化による既存ビジネスの破壊(Digital Disruption)」が日本に比べて大規模かつ急速に進みつつあり、それに対応しなければという危機感、もしくは「このままではヤバイ」という、ある種の恐怖心が大きいと思える。
もしそうならば、日本企業も今すぐにでも取り組む必要がある。そう考えるのは筆者だけだろうか。