日本マイクロソフトが2015年7月1日付けで社長を交代する人事を発表した。現在の樋口泰行社長(58歳)が代表執行役会長に就き、平野拓也執行役専務(45歳)が代表執行役社長に就任する。それに先立ち、平野氏は3月2日付けで代表執行役副社長に昇格した。
「何よりも顧客やパートナー企業に迷惑をかけないことが大事。しかし外資系IT企業の中には突然、社長が交代したり、空席になったりしているところもある。それを反面教師に、入念に検討・計画して交代を進めてきた」−−。樋口泰行社長は3月2日に開いた社長交代の記者会見で、計画的な取り組みだと強調した。
この時期に交代を発表したのも、「2015年7月1日から始まるマイクロソフトの新年度に向けた予算案作りや組織編成を平野氏が担う必要がある」(樋口氏)ため。確かに用意周到といえるだろう。
樋口氏は2007年にマイクロソフトに入社し、2008年4月に社長に就任。以降、クラウドサービスのAzureや企業向けパッケージのDynamics、タブレットPCのSurface、オフィスアプリケーションのOffice365などの日本へのローンチを手掛けてきた。
この間に、事業拠点を東京・新宿から品川に移したり、社名に「日本」の文字を追加したりといったことも、樋口氏が実現したと言える。会見に同席したマイクロソフトインターナショナルのプレジデントであるジャンフィリップ・クルトワ氏は、「過去3年間、先進6カ国の中で日本マイクロソフトがトップの業績だった」と評価する。
その樋口氏が社長から会長に就任するのはなぜか。樋口氏は、こう説明する。
「米マイクロソフトは昨年、サタヤ・ナディラが社長になり、“モバイルファースト”“クラウドファースト”などへの変革を急ピッチで進めている。日本マクロソフトも世代交代を進め、変革をさらに加速させたいと考えた。加えて、この3月一杯で社長就任から7年、日本に根付く企業になるという意味で、社名に"日本"をつけて5年が経過したこともある」
後任の平野氏は北海道出身で、父親が日本人、母親が米国人のハーフ。米国の大学を卒業後、Kanematsu USA、ハイペリオンなどを経て2005年にマイクロソフト日本法人に入社し、主に企業向けビジネスを率いてきた。IT Leadersの読者なら、ご存じの方も少なくないかも知れない。
2011年7月から2014年7月の3年間は、中東欧諸国25カ国の統括責任者を務めた経験もある。「まずは日本に根付き、信頼される会社という樋口の路線を引き継ぐ。並行して、社会がモバイル、クラウドにシフトする中、今後は“わくわくする提案”をしていきたい」と、平野氏は抱負を語る。
7月以降の役割分担について樋口社長は、「日本のビジネスはリレーションが大事。会長就任後は、平野をサポートする形でトップ営業や財界活動、政府へのアドバイス、貢献などを手掛けたい」とした。