IT市場調査会社のミック経済研究所は2015年5月18日、「ERPフロントソリューション」市場(ERPとデータ連携を必要とする基幹システムの周辺ソリューション)に関する調査結果の概要を発表した。特にクラウドサービスの進展と、コスト可視化や残業抑制・管理、危機管理といった経営ニーズから順調な成長が予測されている。
今回、ミック経済研究所が公開したのは、同日発刊の「クラウドで加速するERPフロントソリューション市場の実態と展望(2015年度版)」から要点をピックアップしたものだ。同社は、ソフトウェアサービス提供ベンダー37社を対象に、経費精算、勤怠・就業、ワークフロー、出張管理の4分野を、クラウドサービス(SaaS/ASP)とパッケージソフトウェアの両提供形態から調査を実施。2013年度から2015年度の分野別ERPフロントソリューションの市場規模と、同3カ年の積み上げ数値を基に、2019年度までの中期予測を行っている。
2014年度のERPフロントソリューション全体の市場規模は143億7000万円で、前年対比115.3%となった。全分野で好調な推移となっており、特に経費精算ソリューション分野が前年比132.7%、27億2000万円と大きく伸長し、市場成長に大きく貢献することとなった。また、提供形態別に見ると、パッケージライセンスが前年比104.8%に対して、クラウドは前年比124.4%と大きな伸びを見せ、市場構成比で57.8%を占めている。
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ミック経済研究所によると、コストの可視化や残業抑制/管理へのニーズ、マイナンバー対応、メンタルヘルスケア、危機管理意識の増大など、この市場を押し上げる要因が多く散見されるという。それらの要因から、市場全体で前年比118.8%の170億7000万円にまで伸長し、クラウド構成比も6割を超えると見積もっている。「飽和感の強まりつつあるERP本体の市場の成長に比して、2020年開催の東京夏季オリンピックの前年には成長のピークを迎え、2019年度には351億円の市場規模になると予測される」(同社)
ERPフロントソリューション市場を構成する各分野の動向についてもまとめられている。まず、経費精算ソリューション市場の2014年度規模は前年比132.7%の27億2000万円で、全体の8割以上を占めるクラウドが前年比約40%増と高い伸びを示している。ミック経済研究所は、証憑(領収書、請求書、注文書など)管理の規制緩和に加えて、経費の可視化や一元管理のニーズの高まりが、クラウド需要を後押ししたと分析している。
勤怠・就業ソリューション市場の2014年度規模は前年比111.2%の86億4000万円となった。単なる勤怠状況の管理からサービス残業のチェック、抑制など企業としてのコンプライアンスや公正性担保の目的から重要度が高まっており、ローコスト、短納期のクラウドが大きく牽引していると同社は見ている。
ワークフローソリューション(経費精算、勤怠・就業機能を備えた製品含む)市場の2014年度規模は、前年比110.5%の18.9億円であった。「2014年度は、パッケージライセンスを中心にWindows Sever 2003のリプレースに連動したシステム刷新と、基幹システムとのデータ連携による適用範囲の拡大が市場の伸びを押し上げた」(同社)
出張管理ソリューション市場の2014年度規模は前年比120.4%の11億2000万円であった。この分野について、ミック経済研究所は、BTM(ビジネストラベルマネジメント)の必要性と企業における危機管理意識の高まりの追い風を受けていると見ている。一方で、旅行業系ベンダーの場合、チケットなどの取り扱い額がメインのビジネスモデルであることから、クラウドサービスの無料提供や、取り扱い額とバーターによる利用料値下げ圧力が成長阻害要因となっているという。