[市場動向]

「お客様は神様」をビッグデータが実現!? H&MやIKEA経験の米テラデータの小売業界ディレクター

2015年5月25日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)

日本の流通業、接客業では“金科玉条”とされてきた「お客様は神様」という言葉。昨今は、こうした考え方を否定する見方もあるようだ。だが海外の小売業界においては、この考え方が「ビッグデータ」や「オムニチャネル」というITキーワードと共に語られているという。それぞれが、どう関連しているというのだろうか。

 従来、GMSやSMなどチェーン展開している小売業では、全店舗のPOSデータを収集して総合的に売り上げを分析し、そこから得た結果を全店舗に反映させる手法が多く用いられてきた。だが、消費の多様化や購買チャネルの多角化が進んだ現在、「これまでのPOSデータや在庫データといった“商品中心”のデータ活用ではなく、顧客の購買行動や好みの傾向など“顧客中心”のデータを収集・分析することが、ビジネスの拡大や新たなビジネス機会の発見につながる」(ハンソン氏)。

これからのDWHは「Store Once-Use Many」で構築せよ

 その際、これからのDWH(Data Warehouse)の構築スタイルとしてハンソン氏が強調するのが、「Store Once-Use Many」のアプローチである。つまり、POSデータや在庫データなど従来型の商品中心データに加え、オムニチャネルや社外のソーシャルメディアなどから得られる顧客中心データをまずは蓄積し、それらの全データから、業務別や店舗別などの様々な用途に応じて必要なデータを必要なタイミングで取り出し,分析する。

 これは、多くのベンダーが最近、使い始めている「Data Lake」と同義とも言える。ビッグデータ分析では、複数のデータを組み合わせることが新たなビジネス機会の創出につながるという考え方が定着しつつある。そのためには、より多様な種類のデータを持っておく必要があるが、最初から用途を固定してしまうと他の用途での利用が難しくなる。なので、いったんは全データを蓄積し、実際のデータ活用時に必要な形にデータを整形しようという考え方だ。

 Store Once-Use Manyを実践している企業としてハンソン氏は、英流通大手のTescoを挙げる。同社のDWHには、POSや在庫、購買行動、天候など種々のデータが集約されており、それを価格設定から仕入れ発注、新規店舗の立ち上げなど、様々な用途で分析・活用している。

 このDWHを活用することで、例えば、生鮮品の売れ残りによる廃棄ロスを年間600万ポンド(11億円強)を削減できたという。具体的には、天候と売上高の相関を計算した気象売り上げモデルを開発し。これと購買行動データを掛け合わせることで、より正確な需要予測の作成に成功。この需要予測を定期的に更新し社内プロセスに組み込んでいるという。

 ビッグデータ活用の重要性を今さら指摘する必要はないだろうが、具体的な施策が見いだせないという声が聞こえるなか、「お客様は神様」や「顧客中心のデータ」という視点は再考する価値がありそうだ。

関連キーワード

Teradata / H&M / IKEA / 小売 / アパレル / 店舗 / マーケティング / オムニチャネル

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