「財布の膨らみは領収書」−−。小学生の夏休みの宿題のように、たくさんの領収書をペタペタとのりで貼り付けて提出する経費精算書類。様々な分野で電子化が進む中、この生産性の悪い作業をどうにかしたいと考えている企業は少なくないはずだ。実はこの分野で、アベノミクスの「第三の矢」である規制緩和の動きがあることをご存じだろうか。規制緩和が進めば、財布の中身をすっきりできる日が来るという。現在、この動きを国に積極的に働きかけているのが、経費管理のクラウドソリューションを提供する米コンカーの日本法人だ。
「一刻も早く財布の中の領収書とおさらばしたい」
コンカー日本法人社長の三村真宗氏は、「一刻も早く財布の中の領収書とおさらばしたい」と、さらなる規制緩和に意欲を見せる(写真1)。米国の同僚が、「店でもらった領収書をスマートフォンで撮影してすぐにゴミ箱に捨てている姿を見て、思いを強くした」という。
米国やオーストラリア、ニュージーランドでは、スマートフォンなどで撮影した領収書が正式な証憑として認められているため、紙の領収書を破棄しても問題ないのだという。だから彼らの財布の中には1枚の領収書も入っていない。これを日本でも実現しようというのが、さらなる規制緩和の狙いだ。コンカーの日本法人では、これを政策提言として政府に働きかけていくため、2015年4月に新経済連盟に加入した。
領収書の電子化から保管までを一気通貫で
さらなる規制緩和の内容は、まず「原稿台付きスキャナー」の条件を、「仕様を満たしたデジタルデバイス」にまで広げる。普段持ち歩いているスマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像が使えるようになり、領収書の電子化は一気に進むと考えられる。財布の中身がすっきりするだけでなく、領収書を台紙に貼りつける作業がなくなる。企業としても領収書を紙の状態で7年間保管するためにかかっているコストを削減できる。
タイムスタンプに関しても、現在正式に認められているタイムスタンプサービスは、日本データ通信協会からの認定を受けた4件にすぎない。ここに、さらなるITベンダーの参入を促す規制緩和の動きが出てきているという。これら2件の追加緩和は、政府からは概ね好意的にとらえられており、2016年度には実施される見込みだ。
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さらなる規制緩和に向けてコンカーは、経費精算システム「Concur Expense」において、領収書の電子化から保管までを一気通貫で提供し、企業の生産性を向上させるためのソリューションを開発している。コンカーのサーバー内で、モバイルアプリなどで撮影された領収書イメージにタイムスタンプを付与する機能や、領収書イメージやタイムスタンプ情報を検索する機能、領収書の内容をOCRで読み取り入力作業を省力化する機能などを用意する。クラウドサービスであるため最低限の投資で電子領収書の仕組みを実現できるとしている。