[市場動向]

ワークロード指向強めるストレージ、米Tintriと米NimbleにみるVM単位の性能可視化の重要性

2015年6月24日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

ストレージ製品の選択指標といえば、容量と価格(あるいは両者を組み合わせた容量当たり単価)、入出力性能(IOPS:I/O per second)、インタフェース、そしてディスクドライブの種類などが中心だろう。だが、Software Defined Storage(SDS)型製品の台頭とクラウド環境の広がりで、ワークロード単位、すなわち仮想マシン(VM:Virtual Machine)ごとにストレージ環境の最適化を図る動きが目立ってきた。2015年6月には、米Titriと米Nimble Storageの2社が、VM単位の性能を“見える化”する機能を相次いで強化した。両者の対応をベースに、ストレージのワークロード指向の動きを紹介する。

 具体的には、VM環境の管理ソフトウェアである米VMware製の「vCenter Server」と連携し、VM単位でのデータストアの利用状況を把握する。VMware ESXホストのCPUやメモリーの使用率なども取得できる。これまでは、ストレージの稼働状況はInfoSightで、VM環境はvCenter Serverで個別に管理しなければならなかった。

 InfoSightは本来、Nimbleのストレージ製品の稼働状況を監視するためのクラウドサービス。5分間隔でデータを取得し、独自の予測・統計処理エンジンで解析することで、システム停止を防ぐのが目的だった。そこに、VM単位での性能を把握できるようにすることで、よりワークロード指向でのストレージ運用を可能にした。現時点では、Tintriが実現しているQoSには対応していないが、2015年9月のリリースを予定している新OSでは、QoSにも対応するとしている。

データの確実な保管に加え、活用に向けた最適化が重要に

 SDSが登場した当初は、ストレージ専用装置を汎用サーバーとソフトウェアの組み合わせで置き換えることで、より安価なストレージ環境が実現できることが強調された。だがSDSが、より重要な役割を果たすのは、PaaS(Platform as a Service)+IaaS(Infrastructure as a Service)というクラウド環境の根底を支えるストレージ環境、言い換えればDevOps(開発と運用の融合)やアジャイル開発のニーズに応えられる環境の実現である。

 加えて、スマートフォンに代表されるモバイル環境の広がりは、インタラクティブ(対話型)のアプリケーションを増やし、結果としてデータ参照やデータの書き込みといったアクセスも増加する。そのため、アプリケーション性能のボトルネックは今、ストレージ環境にあると指摘されている。だからこそ、フラッシュストレージへの期待が高まるわけだ。

 しかし、クラウド、オンプレミスを問わずアプリケーションの動作環境は今や仮想化環境が大前提であり、そこでは、TintriやNimbleが強化したVM環境への対応がアプリケーション性能の大きく左右することが分かる。TintriとNimbleの担当者は、「当社製品を利用企業に紹介すると、(VM単位での性能を可視化する)マネジメント機能だけを既存のストレージ環境で使いたいと必ず言われる」と苦笑いしつつも口をそろえる。

 例えば、VMに対しストレージのボリュームを割り当てようとしても、どのVMがどんな処理を要求しているのか、VMとどのボリュームがひも付いているのかを把握する必要がある。それらが把握できても、VMごとに最適化を図ることは、VMの数が多ければ多いほど複雑になる。

 今後、PaaS環境を使ったDevOpsが広がってくれば、アプリケーションは多数のマイクロサービスに分割され、より多数のVMが稼働することになり、ストレージに対するI/O要求も分割・複雑になる可能性がある。ストレージ製品にとって、データを決して失わないという堅牢性は不可欠ではあるが、データを最大限活用するためのワークロードに対する最適化に向けた機能強化が、従来にも増して重要になり、ベンダー各社の差異化ポイントにもなってくるだろう。

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