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IT人材のタスクとスキルを定義した「iコンピテンシ ディクショナリ2015」、IPAが公開

2015年7月3日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

情報処理推進機構(IPA)が、情報システムに携わる人材に求められるタスクとスキルを網羅的に定義した「iコンピテンシ ディクショナリ2015」を公開した。情報システム部門やIT事業会社にとって重要な課題である人材育成に有用であることは間違いない。

 ITに携わるプロフェッショナル人材の育成は、ユーザー企業とIT事業会社の双方に共通する、とても重要な、かつ永遠とも言える課題の筆頭だろう。システムを構築するのも運用するのも、それを活かして経営や事業に貢献するのも、あるいはセキュリティを維持・向上するのも、結局は人材にかかっているからである。

 当然、単に人材を配置し、自発的な努力に期待するだけでは不十分だ。自社に必要な職務(役割)を洗い出し、職務遂行に必要なスキルを可視化・定義したうえで、個々の人材に周知し、さらに職務に見合うスキルを身につけ発揮できているかをモニタリングする必要がある。難しいのはITそのものやITを取り巻く環境が進化し変化すること。職務やスキル定義を適宜、見直さなければならない。

 これらを実践するための指標(ひな形)としては既に、情報システムユーザースキル標準(UISS)やシステムインテグレータなどに向けたITスキル標準(ITSS)がある。2000年代前半に経済産業省が主導して策定したものだ。特にITSSは大手IT事業会社の約70%が何らかの形で採り入れるなど一定の普及を見せている。

 ただ、いずれも最新版は2012年以前の発行とやや古い。例えばセキュリティ専門職種やデータ関連職種が定義されていないなどの課題がある。定義済みの職種やスキルも見直しや拡張がなされず、ある意味で放置されてきたのだ。

 そこでというわけではないが、経産省に代わってスキル標準を主管する情報処理推進機構(IPA)が作成したのが、スキル標準の後継版に位置づける「iコンピテンシ ディクショナリ2015(iCD)」である。IT人材の能力やスキルを「タスクディクショナリ」と「スキルディクショナリ」にまとめた(図1)。試用版を2014年に公開したが、最新版では「情報セキュリティや攻めのITなど、新しい時代に必要な人材育成に対応したタスク/スキルを追加した」という。

図1:iCDのタスク定義の一部図1:iCDのタスク定義の一部
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 ただiCDは、IT分野の共通指標という面よりも、個々の企業や個人の人材能力やスキルの可視化、向上に資することを目指している。UISSやITSSでは、ユーザー企業あるいはIT事業会社を横断した、IT分野に共通の人材や職務の定義を目指し策定されている。この点でiCDは、ITSSなどの後継版とは言い難い面があるが、人材定義や育成に悩む企業、組織にとって有用であることは間違いない。

 ちなみに、UISSやITSSは、日本のIT業界は個々の企業が独自に職務やスキルを定義しており(していなところも多いが)、それが人材の流動性を阻み、あるいは共通的なITスキルの底上げを阻害してきたという反省に立っている。例えばプロジェクトマネジャーの「レベル5」という定義は、どんな企業や業種でもレベル5相当のスキルを有することを示せる共通指標を目指していた。

 話を戻そう。その名前が示す通り、iCDはディクショナリ(辞書)であり、実体は膨大なタスク項目やスキル項目からなるExcelの表である。例えばシステムライフサイクルに準じた評価/実行の大分類だけで29項目ある(図2)。タスクの詳細評価項目に至っては2600以上もある。Excelデータをダウンロードすると見ただけで圧倒されるかもしれない。

図2:タスクディクショナリの構成図2:タスクディクショナリの構成
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 そこでIPAでは、Webブラウザ経由でiCDを利用するための活用システムも用意している。人材育成担当者向けと個々のスタッフ向けがある。いずれも申し込めば無料で利用できるようになっている。まずはiCDをダウンロードし、活用システムにトライアルしてみることをお勧めしたい。
 

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