[技術解説]

操作性と性能で"Google超え"を目指す、AIを搭載するワークス製ERP「HUE」の最新像

2015年8月5日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

ERPパッケージベンダーのワークスアプリケーションズ(ワークスAP)が、「GoogleのUIを企業情報システムに」を旗印に、次期版「HUE(High Usability Enterprise)」の2015年内の出荷に向け開発を急いでいる。出荷を前に、同社は既存ユーザー企業を中心にデモやプレゼンテーションを実施しており、筆者はその1つに参加する機会を得た。デモを見る限り、HUEの操作性は画期的とさえいえる。そこで見たHUEの最新像を紹介しよう。もちろん宣伝が目的ではない。採用するかどうかは別にして、その考え方や機能を知ることは情報システムの将来を考える上で参考になるからだ。

 企業情報システムのUI(User Interface)は、30年前のダム端末の画面からパソコンのGUI(Graphical User Interface)を利用した画面、そしてWebの画面へと変遷してきた。その間、マウスとアイコンによる操作やレスポンス改善、ワークフローの実装など、様々な改善が施されてきたのは事実である。しかしUIの基準を消費者向けサービスに置いた時、「周回遅れ」という形容詞さえ、まだ甘いと思えるほどだ。

 例えばGoogleなどでは、入力した最初の数文字から候補語句を表示するサジェスト機能は当たり前。過去の操作履歴を元にデータを自動入力するオートコンプリート機能も消費者向けWebサイトでは常識になった。しかも膨大な利用者を抱えるはずなのにレスポンス性能は必要十分。こうした機能を企業情報システムはなぜ実装できないのか?下手をすると社内のエンドユーザーから見放されかねない。

100ミリ秒以下のレスポンスと高度な操作性の実現が条件

 こうした状況に一石を投じようとしているのが、国産ERPパッケージベンダーのワークスアプリケーションズ(ワークスAP)である。「GoogleのUIを企業情報システムに」を旗印にするERPパッケージの次期版「HUE(High Usability Enterprise)」を2014年10月に発表し、2015年内の出荷を予定している(関連記事1関連記事2)。

図1:HUEのロードマップ図1:HUEのロードマップ
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 まずは簡単にHUEのおさらいから。ワークスAPはHUEで、GoogleやAmazon.comの操作性を企業情報システムで実現することを目指している(図1)。必然的に、(1)あらゆる操作について100ミリ秒以下のレスポンスを可能にする、(2)サジェスト機能のような高度な操作性を実現する、といった条件をクリアする必要がある。そのためには分散処理が必須になるが、この時、「CAP定理」として知られる問題が生じてしまう。

 詳細はさておき、CAP定理とは、分散処理ゆえにデータの一貫性(Consistency)を完全に保証できない問題である。ミッションクリティカルな企業システムには致命傷になりかねない。それが最近では、実用上支障のないレベルで一貫性を成立させられるようになったため、ワークスAPはERPの中核をなすデータベース管理システム(DBMS)を、リレーショナル型からNoSQL型に切り替える決断をした。Facebookが開発した「Cassandra」というオープンソースのDBMSであり、これがHUEの技術面におけるコアの1つである。

 もう1つが、クラウド(IaaS:Infrastructure as a Service)を前提にすることだ。100ミリ秒以下のレスポンス性能を掲げ、分散処理を前提にする以上、利用するシステム資源をスケールさせるのは当然である。NoSQLデータベースの採用を含め、企業情報システムとしてはかなり違和感があるというか、あまり見かけない構造に思える。ただ、米国のクラウドERPベンダーであるWorkdayも同様な構造を持つ。

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