[海外動向]

米GEをパートナーにIoTに注力、米PivotalがCEOの交代を発表

2015年8月20日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

米EMCの子会社である米Pivotal SoftwareはCEOの交代を発表。同時にPaaS関連の収入が1億ドルを超える見通しであることを発表した。日本での存在感はまだ小さいものの、米General Eletricが10%出資することなどを考え合わせ、注目すべきIT企業の1社である。

 米Pivotal Softwareについて、読者はどんなイメージを持っているだろうか。Pivotalジャパンという日本法人もあるが、知っている人でも米EMCの子会社でソフトウェア会社といった印象しかないかも知れない。だがオープンソースソフトウェア(OSS)の分野で最大手の米Red Hatに次ぐポジションに位置する可能性があるという点で、もっと知っておくべき企業の1社だ。

 そのPivotalが2015年8月18日、CEOの交代を発表した。これまで同社を率いてきたPaul Maritz氏が会長に退き、上級副社長のRob Mee氏がCEOに就くのが骨子。 Maritz氏は米Intelや、Microsoftに在籍した経歴を持つ著名人であり、1986年から2000年を過ごしたMicrosoft時代は Bill Gates氏、Steve Ballmer氏に次ぐナンバー3のポジションだった。

 後任のMee氏は、アジャイル開発のコンサルティング、および関連ツールのPivotal Labsを1989年に設立。2012年にEMCが買収した後もCEOを務めてきた、アジャイル開発やDevOpsなどのプロフェッショナルである。そんなMee氏への交代は、2013年に設立されたPivotal Softwareの立ち上げが一段落した今、オープンソース・コミュニティをはじめとするソフトウェア開発の世界に、より強くコミットするという意思表示と言えるだろう。

 事実、Mee氏は、Pivotalを企業がデジタルビジネスに移行するサポート役と位置づける。「自動車、保険、小売り、エネルギーなど業種を問わず、これからはソフトウェアがビジネスの根幹になる。すべての企業はソフトウェア会社にならないと戦えない」という認識だ。

 ではPivotalは、どんなソフトウェアをラインナップしているのか?大きく3系統あり、1つがPaaSを構築するソフトウェア「Pivotal Cloud Foundry」である。Pivotalの名を冠しているがOSSの形で提供されており、IBMやHP、富士通などの有力ベンダーがパブリッククラウド、プライベートクラウドのPaaSとして採用している。

 CEO交代の発表文の中でPivotalは「Cloud Foundryの収入は年間1億ドルを超える見込み」と述べ、順調に利用が広がっていることを示した。真正面から競合する同じOSSの「OpenShift」(米Red Hatが提供)に対し、少なくとも現時点で一歩先んじたと言えるかも知れない。

 2つ目が「Pivotal Big Data Suite」。Hadoopのディストリビューションである「Pivotal Greenplum Database」、SQLを使ってHadoop(Greenplum)に分析クエリーを出せる「Pivotal HAWQ」、インメモリーで動作するキーバリュー型DBの「Pivotal GemFire」から成るスィート製品である。ビッグデータを管理、処理する製品群だ。

 Pivotal Softwareは2015年4月、そのPivotal Big Data SuiteをOSSにすると発表している。元々、プロプライエタリだったCloud FoundryがOSSにすることで商業的に成功しつつあり、それに倣った形だ。実際、自由度などの点でOSS化は歓迎される動きだろう。

 第3は上記のPivotal Labs、具体的にはアジャイル開発のコンサルティングや、関連ツールの提供である。ツールとしては、アジャイルプロジェクトマネジメントをサポートする「Pivotal Tracker」が知られている。

 これら3つを合わせると、大量のデータを高速に処理し、柔軟に進化させる必要のあるクラウド・アプリケーション、例えばIoT(Internet of Things)のアプリケーション開発に適したソフトウェアを擁していることが分かる。Systems of Record(SoR)とSystems of Engagement(SoE)という分類では、SoEのアプリケーションだ。

 実際、IoTで最先端を行く1社である米GEがPivotalに10%(1億500万ドル)資本参加しており(ほかの出資者はEMCが62%、VMwareが28%)、GEのIoT向けソフトウェア「Predix」はPivotalのソフトウェアがベースである(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/12669)。まだ存在感は大きいとはいえないものの、その意味でもPivotal Softwareは注目すべきIT企業の1社になりつつある。

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