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「アプリケーション開発を変革する」アクセンチュアが米Pega製品を国内展開

2016年3月3日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

読者は「Dynamic Case Management(DCM)」や「Advanced Case Management(ACM)」といった言葉をご存じだろうか。「BPM(Business Process Management)」の延長線上にある概念や技術、ツールであり、そのため「インテリジェントBPM」という別名もある。米国ではBPMに変わるものとして普及・定着しつつある。

 「Dynamic Case Management(DCM)」や「Advanced Case Management(ACM)」の何がダイナミックであり、アドバンストなのだろうか?BPM(Business Process Management)と何が違うのか?

 まず、これらの源流であるBPMは、定義可能で手順が決まっているプロセスに焦点を合わせてきた。例えば、引き合い → 与信 → 受注 → 配送指示 → 請求書発行といったビジネスプロセスを図式化して定義し、解釈・実行し、改善していく。そんな用途である。

 これに対しDCMやACMは用途こそ同様だが、よりアドホックでイベント駆動な特性のあるプロセスのシステム化に適している。例えば保険契約の際に、顧客自身に名前や健康に関わる情報を入力してもらう場合、想定通りの順番で入力してくれるとは限らない。全体としてなすべきことは決まっているが、途中で枝分かれしたり、ある処理を飛ばしたり、順番が入れ替わったりといったことが起こり得る。

図1:DCM(Dynamic Case Management)分野への参入企業(出所:The Forrester Wave, Dynamic Case Management, Q1)図1:DCM(Dynamic Case Management)分野への参入企業(出所:The Forrester Wave, Dynamic Case Management, Q1)
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 こうした、旧来のBPMでは記述しにくかった問題をカバーするのがDCM/ACMだ。米国では様々なベンダーが関連ツールを提供している(図1)。

 しかし相対的に業務担当者のレベルが高く勤務年数も長い日本では、DCMどころかBPMの考え方やツールでさえ普及してこなかったのが現実。販売管理システムにすべてのプロセスを作り込んだり、仮にシステム連携が必要な場合でも担当者が人手でこなしたりしてきたからだ。過去何度かの"BPMブーム"はあったものの、存在感はないし、専門家もごく少ない。

 にもかかわらずBPMや、DCM、ACMを取り上げたのには理由がある。今後は使う方メリットが多くなる可能性が高いのだ。例えば、銀行や証券、保険といった業界では窓口や対面ではなく、Webやアプリ経由で消費者が何かを申し込んだり、契約したりするケースが増えている。従業員はいざ知らず、顧客や消費者が想定した手順で操作してくれるとは限らない。通信や医療、自治体なども同様だろう。

 この点は いわゆる顧客体験(CX:Customer Experience)に直結する。操作プロセスを可視化し、監視し、迅速に改良することが欠かせないわけで、DCMやACMを活用するメリットが出てくる理由だ。もちろん、プロセスを可視化して定義し、個々の処理モジュールと疎結合型で連携するようにシステムを作らなければ変更や改善が難しくなる問題もある。

 こうしたシステム需要を睨んで、アクセンチュアは3月初め、DCMの大手であるペガジャパンのソリューションを日本で展開するため、CoE(Center of Excellence)組織を創設すると発表した。海外では2005年からペガのパートナーとして協業しており、2400人のペガに精通した人材を擁している。

 日本に作るCoEはペガ製品の専門家数10人で構成し、主に製品の導入コンサルティングや支援を提供する。「ペガは業務システムの新規開発やレガシー刷新にも利用できる。CoEを通じてアプリケーション開発を変革したい」(アクセンチュアの篠原 淳テクノロジーコンサルティング本部マネジング・ディレクター)という。

 「CoEを創設」という意味が分かりにくいが、アクセンチュアがグローバルで蓄積したペガに関するノウハウを集約したり、ユーザー企業におけるペガ製品に精通した人材を育成したりする役割も担う。単純な導入コンサルティングやシステム開発から一歩踏み出し、ユーザーが自ら利用できるようにするなどのノウハウも提供すると考えればいいだろう。

 ではペガとはどんな製品なのか。本社は米国ボストンにあるPega Systemsで、創業は1983年。日本法人であるペガジャパンの設立は2011年である(図2)。

図2:ペガジャパンの国内ユーザー企業の例図2:ペガジャパンの国内ユーザー企業の例
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 製品は、「CRMアプリケーション」と「Pega7 Platform」の2系統がある。前者は、販売管理やコンタクトセンター、マーケティング支援などのアプリケーション群、後者はアプリケーションの開発・実行環境だ。ただしCRMアプリケーションもPega7上に構築されているから、その意味では製品は1つだといえる。

 Pega Systemsは元々、BPMツールベンダーとして認知されており、Pega7 Platformもその流れを汲む。つまりBPMツールでもあり、Pega7 Platformにはデータモデルを定義したりUIを開発したりする機能が備わっている。このためDCMツールの枠を超えて、幅広いアプリケーション開発に使えるという。

 「モデル駆動型開発を基本とし、業務モデルを変更する形でシステムにしていく。コーディングすることなく、インタラクティブかつイタラティブに様々なアプリケーションを開発できる。仏Capgeminiが実施したJavaEEとの比較では、6.2倍の生産性が示されている」(ペガジャパン)。

 とはいえ「Pegaの APIは基本的に1件ずつの処理となるため、SQLでの条件指定による一括更新のようなバッチ処理には向かない」(あるユーザー企業)という話もある。オールマイティに使えるというよりも、顧客インタラクションを中心にしたフロント系のアプリケーション開発に適すると捉えるべきだろう。

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