IT投資がSoR領域からSoE領域に変化するに従い、それぞれの企業が持つ優れた点をITでさらに強化していくことが求められている。これらの取り組みを現場主体でいかに実践していくか、そしてその先の全社的イノベーションにいかにしてつなげていくのか──。こうした想いを胸に、ソリューション展開を図っているのがNTTデータ イントラマートである。この7月末には、注目製品「IM-BPM」を満を持してリリースした。
大手企業を中心にERP(Enterprise Resource Planning)システムの導入が盛んになったのは1990年代からのことだ。会計や販売、サプライチェーンなどを中心とする基幹業務の領域においては、ERPの活用によって、グローバルでのベストプラクティスから導き出された効率的で標準的な業務プロセスを手に入れることができた。それが当時の“IT化による価値”だった。
多くの企業においてバックエンド系のシステム整備が一巡した今、次なるIT戦略のテーマとして浮上しているのが、顧客や取引先に積極的に関わりながら良好で強固な関係を築いていくフロントエンド系のシステムだ。前述のERPなど基幹業務を支えるのが「SoR(System of Record)」と呼ばれるに対し、これからの主戦場と目されているこの領域は「SoE(Systems of Engagement)」と呼ばれている。
SoEは、これまでにない事業モデルを他社に先駆けて築き、市場の反応を確かめながらブラッシュアップしていく取り組みが欠かせない。当然ながらパッケージなど存在していないので、自らの手で、あるいはSIerに協力を仰いで独自システムを構築することが必要となる。ただし、きびきびとしたスピード感がものをいうだけに、従来ながら仕様をがっちりと固めて、時間をかけてスクラッチ開発するスタイルが馴染まず、それが大きな課題として企業にのしかかっているのだ。
この問題に一石を投じたのが、NTTデータ イントラマートである。「技術進歩によって、個々の要素・機能をモジュール化して、ブロック玩具のように企業固有の業務プロセスを素早く組み上げていく手法が採れるようになりました。これによりパッケージソフトウェアのコストメリットを再現しつつ、柔軟性を持たせられるのです。スクラッチソリューションでは高額すぎて諦めていた領域を、気軽にデジタル化できるのが最大のメリットです」──こう強調するのは同社の代表取締役社長 中山義人氏だ。
そうしたコンセプトで開発されたのが、同社の「intra-mart Accel Platform(以下、iAP)」である。2013年のローンチ以降、この手法に注目した多くのユーザー企業に導入され、実績を積んできた(累積では4800社を超える導入実績)。iAPを活用するユーザーの多くは、すでに導入しているERPやCRMなどと密接に連携しながら、その間を縫うように業務プロセスを構築し、組織やシステムをつなげていくことに取り組んだ。それにより、全体の最適化や効率化といった効果を享受している。
ユーザーの1社である三菱電機ビルテクノサービスは、エレベーターやエスカレーターの保守管理業務を提供する事業者である。同社では、特別な保守対応が必要となる古いエレベーターの年間更新台数が2020年には現在の倍に増えることを想定しつつも、業務処理をする人材は倍増できないという課題を抱えていた。同社は、2015年にiAPを導入し、業務プロセスの効率化と属人性の排除を徹底することにより、最小限の人員増で業務を遂行できる体制整備を図っているという。
業務効率化から始まるイノベーション
こうした業務効率化の事例は、iAP活用のスタート地点となる。既存の課題解決を目指して導入した後、さらに活用の幅を広げて、新たな成長軸を創ろうとしているユーザーもいるという。
「こうした事例に共通する興味深い点は、現場がイノベーションの起点になっているということです。一握りの天才が起こす欧米型イノベーションと異なり、実に日本企業らしいイノベーションの創出スタイルです。ただしそれには、現場の人たちの間で、アイデアを具現化できるアプローチやツールが必要です。ここで、非常に容易な操作で業務プロセスを作り上げることができるiAPが一役買っているのです」(中山氏)。