IoT(Internet of Things:モノのインターネット)への関心が高まっている。そうした中で「利用者に提供するアプリケーションソフトウェアやモノに組み込むソフトウェアの価値を重視すべき」と指摘するのが、ICカードや個人認証大手の蘭ジェムアルトだ。IoTにおけるソフトウェアの価値について、ソフトウェアマネタイゼーション事業本部のプロダクトマネージメントディレクターであるLaila Arad-Allan(ライラ・アラドアラン)氏に聞いた。
一方のエンジニアリング部門にすれば、これらの変更が発生する度にライセンス管理の仕組みを変更するのは大変だし、場合によっては不可能だったり、期限に間に合わなかったりしてしまう。プラットフォームがあれば、ソフトウェアそのものへの対応は一度だけで済ませ、ライセンス形態の変更はソフトウェアの利用を許可するための仕組みの運用で対応できる。
もう少し具体的に説明すれば、エンジニアリング部門は、ライセンス管理をしたいソフトウェアを鍵付きの封筒に格納するだけで良い。事業部門は、エンジニアリング部門に依頼することなく。その封筒の鍵を開けるためのコードの発行形態をコントロールすることで、常時利用可能にしたり一定期間だけ利用できるようにしたりが可能になる。
コードの発行形態を顧客がセルフサービスで設定/変更できるようにするポータルサイトの仕組みや、クラウド経由で実現するサービスもある。クラウド経由の場合は、顧客の利用状況も把握できるようになる。製造業の組み込み用途向けには、基本ソフト(OS)を持たないデバイスでも利用できる「Sentinel Fit」と呼ぶ製品も用意している。
−−そのプラットフォームを製造業が導入すれば、どのようなビジネスモデルが可能になるのか。
いくつかのモデルが可能になるが、適用範囲が広いのは、ソフトウェアの機能別ライセンスの仕組みを使った製品の開発・販売だろう。共通のハードウェアで複数種類の製品を量産したり、機能グレードが異なる製品を販売したりが可能になる。
すなわち、製造段階では、全機種分あるいは、全機能を実現するためのソフトウェアをインストールしてロックを掛けておく。出荷後、ライセンス契約に基づき、該当するソフトウェアの使用を許可することで、客先では異なる製品として動作させたり、オプション設定している付加価値が高い機能を持つ製品として動作させたりするわけだ。
こうした仕組みは既に、通信機器業界やアーケードゲーム機業界、あるいはMRIやCTといった医療機器業界で利用が始まっている。通信装置業界では米Cisco Systemsも、その1社だ。同社は2016年8月に従業員の2割をレイオフすると発表しているが、これは通信機器のソフトウェア定義化の進展に対応し、従来のモノ作りとは異なるスキルセットを獲得するためだ。当社に相談を求めてくる製造業はいずれもソフトウェアセントリックになってきている。
また製造業における製造委託における不正防止にも活用できる。例えば1000個の製造を委託した際に、発注数を上回る製品が製造され、それがブラックマーケットに流通するといったことが起こっている。ここに、ライセンス管理の仕組みを適用すれば、実際に動作する製品数を発注元が管理できるため、製品を不正に製造されても、それは動作せず、単なるモノにしかならない。
こうした取り組みの先に、製品の利用状況を示すデータに基づく製品/サービスの提供や、そうしたデータを第3者に提供することによる周辺サービスの広がりといった世界が待っている。ただ、そうした段階がいつ訪れるのかは、各社の製品のコネクティビティの進展次第だ。