[市場動向]

IoTで製品志向からサービス志向へ、”デジタルツイン”と”サービタイゼーション”を目指せ(前編)

2016年11月8日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

IoTと基幹システム、あるいは業務遂行をサポートするシステムを連携させることで、ビジネスの多くを可視化・自動化する。同時に製品中心(Product Centric)からサービス中心(Service Centric)の事業モデルに軸足を移す−−。製造業やB2Bのサービス業に強みを持つスウェーデンのERPベンダー、IFSが開催した「IFS World Conference2016」の内容を要約するとこうなる。先行きが見通せない今日において、「デジタルツイン」と「サービタイゼーション(サービス化)」が鍵になるという認識だ。

 このような問題意識のもと、繰り返し強調されたのが「デジタルツイン(Digital Twin)」と「サービタイゼーション(Servitization:サービス化)」という言葉だった。「製造業や物流サービス業が向かうべき方向」といったニュアンスである。説明は不要かも知れないが、デジタルツインは物理的な製品やモノの状態をIoTなどの仕組みを用いてデジタルのモデルやデータとして再現すること。状態を精緻かつリアルタイムに把握することで、次にどうなるか、例えば、いつ保守が必要になるかを予測できるようにする。

 サービタイゼーションは、製造業が製品や生産に集中する状況からサービスで収益を上げるモデルへと転換することを意味する。「『規模や製品の複雑さとは関係なく、世界中の製造業の65%が今後3年以内にサービスで稼ぐようになる』という予測がある。もちろん、それは決して簡単ではなく、(時間と労力を伴う)ジャーニーである」(IFSでGlobal Manufacturing Industryディレクタを務めるAntony Bourne氏)。

 「サービスにはスペア部品を確実に供給するような基本的なもの、定期メンテナンスや監視など中間的なもの、リスクやレベニューをシェアする先進的なもの、という選択肢がある(図2)。これらは顧客のコスト削減、リスク低減につながるため、取り組む企業が増えている。顧客にクラウドを提供して状況を可視化したり分析したりできるようにするサービスもその1つだ。産業機器向けのコントローラーや入出力デバイスを製造するスウェーデンのBeijer Electronicsがすでに提供している」(同)。

図2:製造業が実施できる3つのサービス図2:製造業が実施できる3つのサービス
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 それは分かったとして、どうやって具現化するのか?Bourne氏によれば、 「収益サイクルの長期化への対応、マーケティングセンスを備えた人材の採用、人事制度の変革、規制対応など、IT以外に考えるべきことは多い。(ERPの)IFS Applications9でも、販売モデルに加えてサービス提供モデルをサポートするために取り組んでいる。中でも重要なのがIoTである」。客先に設置されている製品や機器の状況を把握して、必要な手を打てるようになっていなければ、デジタルツインやサービタイゼーションは実現できない。IoTは大前提というわけだ。

IoTに絡む製品、ユースケース、事例を訴求

 しかしIoTを現実のビジネスに生かすのは、欧米でもまだこれからのようだ。IoTの専門家として初日の基調講演の冒頭に登壇したAccenture DigitalのManaging DirectorであるBen Salama氏 は、こう指摘する。

 「2015年、ガートナーはIoTが最も期待されたテクノロジーの1つだと言い、また世界経済フォーラム(WEF)は2016年初頭のダボス会議で、産業のIoT化により10兆ドル規模の価値が生まれるとした。確かに2020年にはセンサーデバイスは2120億、インテリジェントデバイスは500億、4G+LTEに接続できる人は25億人になるなどIoTは増殖し続ける(図3)。しかし企業の多くは今もエンドツーエンドのバリューチェーンをどう築くかを検討するPoC(概念実証)に留まっている。既存のデータから価値を生み出すことさえ困難であり、IoTとなるとなおさらである」

図3:「IoTは増大し続けるが、その半面で複雑さも増大する」とAccenture Digitalは指摘する図3:「IoTは増大し続けるが、その半面で複雑さも増大する」とAccenture Digitalは指摘する
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 こうも続ける。「企業は何からIoTを始めるべきか。答はアセットの最適化にある。アセットをより長く利用し、故障や障害に対処し、デジタルツインによって継続的に最適化することだ。もちろん、これは第一歩に過ぎない。製品をIoT化し、顧客がどうそれを使っているかをリアルタイムで把握できれば、信じられないほどパワフルである。このようなサービス化を実現すれば、新たな収益や顧客との関係強化を導出できる」。

 この発言をWoCo2016の冒頭に持ってきたことから推察できる通り、IFSとしてもIoT関連の製品やユースケース、取り組み事例を、多数準備していた。「IFS IoT Business Connector(IoT BC)」が新製品(新機能)の代表例である(関連記事『IoTとERPを連携させるソリューション、スウェーデンIFSがAzureベースで提供へ』)。IFSでCTO(最高技術責任者)を務めるDan Matthews氏は、2日目の基調講演でIoT BCを次のように説明した。

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