[インタビュー]

「IoT、クラウド、5Gの垣根がなくなってきた」エリクソン日本法人の2トップ

2016年11月25日(金)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

IoTへの期待が高まる中、それを支えるネットワークのあり方へも関心が高まっている。より高速性を求める5Gや、低消費電力を優先するNB(Narrow Band)-IoTやLPWA(Low Power Wide Area)などだ。そうした中、移動体通信機器メーカー大手であるスウェーデンのエリクソン(Ericsson)がNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの3大携帯キャリアに向けてIoTをにらんだプラットフォーム導入を進めている。エリクソンはIoTをどうとらえているのだろうか。

──通信事業者はエリクソンとは近しいが、他業種の企業でエリクソンをICTベンダーとして選んでいる理由は。

エリクソンの野崎 哲 代表取締役社長エリクソンの野崎 哲 代表取締役社長

野崎 大きく2つある。1つは、モビリティを必要としていること、もう1つはグローバルな展開を必要としていることだ。例えば最近話題の「コネクテッドカー(ネットにつながる車)」を考えほしい。

 一口にコネクテッドカーと言っても、(1)車内でのコンシェルジュ、(2)インフォテイメント、(3)車のモニタリング、(4)自動運転など、いくつかの段階がある。車内でのコンシェルジュなら音声を扱えばよいが、インフォテイメントになればインターネットとの親和性が不可欠だ。さらに車のモニタリングではセキュリティが重要になってくるし、自動運転になるとリアルタイム性を確保できなければならい。

 特に、(2)インフォテイメントと(3)車のモニタリングの間で次元が異なると見ている。前者は、顧客とのタッチポイントを増やすという側面が強いのに対し、後者はモニタリングによって保守費用を低減するという側面が強くなる。つまり、何を実現するかで要件は全く異なっており、それぞれに最適化したネットワークや、どこでデータを処理するかといったアーキテクチャーが必要なのだ。

 コネクテッドカーに搭載する通信モジュールだけをみても2種類が必要だと考える。(1)と(2)のための通話/ネット利用のためのモジュールと、(3)と(4)のためにセキュリティを考慮したモジュールである。当社が提供するIoTのためのクラウドである「IoT Accelerator」上では、自動車メーカーがコネクテッドカーのための各種アプリケーションの検証も始めている。

 加えて、仮想化やクラウドといっても、コンピューターの視点からの取り組みはネットワークからの取り組みに比べ“緩い”と感じることが少なくない。これでは当社が「Networked Society(ネットワーク化社会)」と呼ぶ社会基盤は支えられない。テレコムグレードでのネットワークに関するデザインやコンサルティングといった当社の強みが、クラウドやデータセンターにおいても必要なはずだ。

──米AT&Tがメディア大手の米タイムワーナーを買収するなど、通信事業者はNFVへの移行でサービス事業強化を進めている。利用企業のネットワーク環境はどう変わるのか。

エリクソン AT&Tの例はアグレッシブすぎる例だと思うが、コンテンツは顧客を魅了する有力な手段である。なのでNFV化においても遅延がないことが要件として上がってきている。

 当社は今、ネットワークからNFVやクラウド、メディア、そして産業向けソリューションまでの提供に注力している。ただし、ネットワークからメディアまでは、通信事業者がサービス事業の拡張の一環として提供されるだろう。これはIoTの領域においても同様だ。利用企業とすれば、IoTのためのクラウドやコンテンツが提供されることで、IoTのためのインフラ面でのハードルは下がっていく。

──5Gの商用サービス化では、2020年の東京オリンピック/パラリンピックが1つの起点になる。どんな変化が起こりそうか。

野崎 エリクソンは2000年から、オリンピックだけでなくサッカーやアメリカンフットボールなどの大規模イベントのネットワーク環境をサポートしてきた。東京オリンピックに向けては、2012年のロンドン、2016年のリオでの経験や利用状況の変化を踏まえながら最適化を図りたい。

 特にロンドンからリオではネットワークの利用方法が大きく変化した。海外からの利用が増えたことと、ダウンロードだけでなくアップロードが増えたことである。ソーシャルメディアの普及で画像や動画を投稿することが一般化したためだ。こうした変化は単にオリンピック時にとどまるものではない。顧客とのタッチポイントを増やしたい企業にすれば、こうした一般消費者の変化を睨みながら、そこに最適化してくるネットワークをどう活用できるかといった点からもアプリケーションやサービスを考える必要があるだろう。

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