[インタビュー]

「IoT、クラウド、5Gの垣根がなくなってきた」エリクソン日本法人の2トップ

2016年11月25日(金)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

IoTへの期待が高まる中、それを支えるネットワークのあり方へも関心が高まっている。より高速性を求める5Gや、低消費電力を優先するNB(Narrow Band)-IoTやLPWA(Low Power Wide Area)などだ。そうした中、移動体通信機器メーカー大手であるスウェーデンのエリクソン(Ericsson)がNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの3大携帯キャリアに向けてIoTをにらんだプラットフォーム導入を進めている。エリクソンはIoTをどうとらえているのだろうか。

エリクソン日本法人のMikael Eriksson(マイケル・エリクソン)代表取締役社長と野崎 哲 代表取締役社長エリクソン日本法人のMikael Eriksson(マイケル・エリクソン)代表取締役社長と野崎 哲 代表取締役社長

 エリクソン日本法人による、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの3大携帯キャリアによる5GやIoTに向けたプラットフォーム構築や実証実験の発表が相次いでいる。2016年11月には、NTTドコモとインテルとの3社が2017年から、東京での5Gのトライアルを開始すると発表。KDDIとは2016年6月にIoTのためのデバイス接続基盤の構築で提携したと発表している。

 通信事業者が次世代事業基盤に位置付けるNFV(Network Functions Vertualization)においても、2016年2月にソフトバンクに導入したクラウド基盤が、2016年3月にはNTTドコモに導入したNFV環境が、それぞれ商用運用を開始している。いずれも5GやIoTに向けたサービス提供を視野に入る。

 いずれもネットワーク環境の刷新というエリクソンの“本業”ではある。だが、同社は、NFVの基盤でもあるオープンソースの「OpenStack」を使ったクラウド基盤やそのためのサーバーハードウェアなども手がけ、ICTの“総合ベンダー化”を指向している(関連記事『「変革のDNAに基づき次代のICT企業になる」エリクソン日本法人の2トップ』。プラットフォーム刷新を急ぐ通信キャリア、あるいはエリクソン自身は、NFVの先に、どんなIoT関連サービスを描いているのだろうか。日本法人の舵取りを担うMikael Eriksson(マイケル・エリクソン)氏と野崎 哲 氏の2人の代表取締役社長に聞いた(文中敬称略)。

──通信事業者のNFVへの取り組みが加速しているようだ。

エリクソンのマイケル・エリクソン代表取締役社長エリクソンのマイケル・エリクソン代表取締役社長

マイケル・エリクソン(以下、エリクソン) NFVの導入に向けては既に60を超える契約を獲得している。商用運用も11件で始まっている。そこでは、当社のバックグラウンドである通信のスキルや経験に加え、サーバーやストレージ、OSS(オープンソース)といったITのスキルや経験が求められており、当社のICTベンダーとしての側面も強まっている。

 通信事業者のみを対象にしているように見えるが、当社の目標は多くの企業に向けたソリューションの提供にある。通信事業者向けが先行しているのは、現状からNFVへの移行というハードルが高い分野から取り組んでいるためだ。通信事業者が求める要件/品質に応えることが、多くのITベンダーとの差異化点になる。ここでの知見を元に、企業に向けたPaaS(Platform as a Service)を提供し、デジタルトランスフォーメーション(変革)を支えたい。

野崎 哲(以下、野崎) NFVが視野に入ってきた3年前、顧客企業からは「(これまでの主力商品である)通信機器が売れなくなるため、エリクソンはNFVをやりたくないはずだ」と言われた。だが、当社も、ハコ物ビジネスにとどまっていては、これからのネットワークは牽引できない。だからこそ当社はNFVで先頭を走ることで、次のサービス/ソリューションを生みだそうとしているのだ。

 ただ最近は、IoTとクラウド、5Gといった領域の垣根がなくなっているように感じている。IoTの話をしていてもクラウドや5Gの話になるし、5Gの話をしていてもIoTの話になっていく。これはデジタル変革に向けては、これらのテクノロジーをエンド・ツー・エンドで、いかに柔軟に、かつアジリティ(俊敏性)を持って組み合わせていくかが重要だと、多くの企業が気づき始めたからだろう。

エリクソン エンド・ツー・エンドが重視される背景にはCX(Customer Experience:顧客体験)を高めたいという気運がある。一方で、ミッションクリティカルなIoTでは、スループットや遅延に対する要件が高まってくるが、これもエンド・ツー・エンドでの対応が不可欠だ。当社のテレコム分野での専門性は、デバイスの管理などに生きてくるが、そこに研究開発やパートナーシップによりエンド・ツー・エンドでカバーできる機能や体制を整える。システム全体を統合しマネジメントできるかどうかが求められている。

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