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西松建設、200km離れた建設重機を精密に遠隔操作する検証、APNとローカル5Gで遅延を100ミリ秒に

超遠隔操作の現場への実装が前進

2025年8月4日(月)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

西松建設(本社:東京都港区)は、200km離れた建設重機をAPN(全光ネットワーク)とローカル5Gを用いて精密に遠隔操作する検証に成功した。東京都-栃木県間を想定した拠点間に2拠点間通信にNTTの「IOWN APN」を適用し、遠隔操作が十分に可能な映像伝送遅延約100ミリ秒を達成。超遠隔操作の現場への実装が前進できたとしている。西松建設とNTT東日本が2025年8月1日に発表した。

 西松建設は、山岳トンネルを対象に、建設重機の遠隔操作を含む山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」(図1)の開発を進めている。これまでに広島県や岡山県の遠隔操作室から、栃木県にある西松建設の実験施設「N-フィールド」(写真1)の建設重機を超遠隔操作する検証を行ってきた。

図1:山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS」の構想図(出典:西松建設)
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写真1:栃木県にある西松建設の実験施設「N-フィールド」(出典:西松建設)
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 しかし、拠点同士の通信にインターネットVPN回線やLTE、工事現場の無線通信に無線LANを利用する場合、高画質カメラを複数搭載した建設重機を多数台同時に遠隔操作した際に最大で約1秒の映像伝送の遅れが生じ、遠隔操作精度の問題を抱えていたという。「ほかにも、通信品質に起因して、建設重機オペレーターの空間認識能力が低下したり、トンネル内での障害物検知や粉塵環境下での視認性が低下したりする問題も生じていた」(同社)。

 そこで西松建設は、NTT東日本の支援の下、通信品質に起因する課題を解決するため、遠隔操作の2拠点間通信にAPN(All-Photonics Network:全光ネットワーク)を、工事現場の無線通信にローカル5Gを用いた高速通信環境の構築プロジェクトに取り組んでいる。これにより、通信状況が不安定な場所でも精密な遠隔操作が可能になる。

 実際の遠隔操作環境を構築する前段階として、NTT中央研修センタ(東京都調布市)にて、カメラ映像と制御信号の無線通信にローカル5Gを、遠隔操作室までの2拠点間通信にNTTの「IOWN APN」を適用し、東京都-栃木県間を想定した距離200kmのシミュレーション構成で遅延測定を実施した(図2)。

図2:遠距離にある建設重機をAPN(全光ネットワーク)とローカル5Gを介して遠隔操作する検証システムの全体像(出典:西松建設)
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 検証の結果、映像・制御信号の遅延は約100ミリ秒となり、遠隔操作が十分に可能な速度を達成した。結果を踏まえ、2025年8月1日に実験施設であるN-フィールドにおいてローカル5G基地局を開局。2025年度中にN-フィールドとNTT中央研修センタをAPNで結び、実際の遠隔操作環境を構築した検証を行う予定である。

 「長距離遠隔操作技術によって、遠隔操作の専用拠点から複数の現場を統合的に管理・操縦することが可能になる。これにより慢性的な人手不足を解消し、遠隔地への移動が困難な人にも建設重機操作という専門職として社会参画の機会を提供可能になる」(西松建設)

 同社は今後、APNとローカル5Gをデジタルツインの通信基盤に適用し、大容量3次元データや建設重機の稼働状況をリアルタイムに取得・解析することで、山岳トンネル工事の自動化を目指すとしている。

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