[市場動向]
サーバー証明書の有効期限が段階的に短縮、CyberArkが手作業での管理運用に警鐘
2025年12月25日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)
2029年3月、SSL/TLSサーバー証明書の有効期間が、現在の最長398日が最長47日間に短縮され、現在年1回で済んでいる更新作業が年8回以上に増える。CyberArk Softwareは2025年12月24日、都内で説明会を開き、大半が手作業でサーバー証明書を更新している現状下で企業が抱えるリスクを挙げ、作業の自動化を急ぐ必要性を説いた。
写真1:CyberArk Software ソリューションエンジニアリング本部 ソリューションアーキテクト CISSPの染谷浩子氏拡大画像表示
「SSL/TLSサーバー証明書は、部門ごとのアプリケーション担当者が手作業で更新しているのが現状だ。これから証明書の有効期限が短くなっていくにあたっては、更新作業の自動化が必須だ」。CyberArk Softwareのソリューションエンジニアリング本部でソリューションアーキテクトを務めるCISSPの染谷浩子氏(写真1)は、企業によるサーバー証明書の運用実態と課題について、こう指摘した。
既報のとおり、2025年4月に証明書の要件を定める業界団体「CA/Browser Forum」において、SSL/TLSサーバー証明書の有効期間短縮化が可決された(発表文、関連記事:SSL/TLS証明書の有効期間が2029年に47日へ短縮、証明書管理の自動化が必須に)。
2026年3月以降、段階的に最長有効期間が短くなり、2029年3月以降に発行する証明書の最長有効期間は47日間になる。つまり、手作業による証明書の更新が段階的に困難になっていく。変更スケジュールは以下のとおりである(図1)。
- 2026年3月14日まで:398日(1年に1回)
- 2026年3月15日以降:200日(1年に2回)
- 2027年3月15日以降:100日(1年に4回)
- 2029年3月15日以降:47日(1年に8回以上)
図1:サーバー証明書における最大有効期間の変更スケジュール(出典:CyberArk Software)拡大画像表示
企業のコーポレートサイトやECサイトで、サーバー証明書の有効期限が切れていた場合、訪問者・顧客がサイトにWebブラウザでアクセスしたときに警告が出ることになる。染谷氏は、「たった1つの更新忘れが問題になったケースは過去にも多い。有効期限切れをビジネスリスクとして捉えなければならない」と警告した。
遠い将来の話ではなく、2026年3月には早くも有効期限が半減する。その後、段階的に最大47日にまで有効期限が短くなると、2029年には更新頻度は現状の約8倍になる(図2)。CyberArkは、「事業が成長してサーバー証明書の必要数が増えると、さらに更新回数は増える」(染谷氏)ことへの注意を促している。
図2:サーバー証明書の更新頻度が上がることによる影響(出典:CyberArk Software)拡大画像表示
また、今後、公開鍵暗号が現在主流のRSAや楕円曲線暗号(ECC)から耐量子計算機暗号(PQC)に替わる要求が高まった際などにも証明書の更新が必要になる(関連記事:NIST、耐量子暗号アルゴリズム3種類をFIPS標準として最終決定、格子暗号で鍵交換/電子署名)。
なお、サーバー証明書は、PKI(公開鍵暗号基盤)の上に成り立っている。ユーザー企業は、公開鍵などの必要な情報を含んだ発行リクエスト文書(CSR)を証明書発行ベンダーに提出し、証明書発行ベンダーがこれに電子署名を施すことでサーバー証明書を発行している。
ユーザーは、更新の手続きとして、有効期限が切れないうちに、証明書発行ベンダーから新たな有効期限のサーバー証明書を入手して入れ替える必要がある。染谷氏によれば、現状、ほとんどの企業で、この作業が手作業で行われているという。
例えば、「だれが、どのサーバーで証明書を使っているか、有効期限はいつまでか」といったインベントリ情報を手作業で調べ、Excelで台帳管理している。また、サーバー証明書も、証明書発行ベンダーのWeb画面を操作してテキストファイルのコピー&ペーストで生成・入手しているという。
●Next:証明書更新作業をどうやって自動化するか
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