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脱JTCで「AIファースト企業」目指す─生成AIの全社活用で“AI産業革命期”を勝ち抜く関西電力

2026年1月6日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

関西電力が、2030年に到来が予想されるAI産業革命を見据えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させている。2025年度はDX効果293億円を見込むという。2025年11月12日開催の「IT Leaders Tech Strategy LIVE AIエージェントの戦力化はIT部門の仕事─自社特化の生成AI活用基盤を築く」に、関西電力 理事 IT戦略室長の上田晃穂氏が登壇。全社を挙げて「AIをフル活用し、AIを前提とした業務」へのシフトを目指す取り組みを紹介した。

業界を取り巻く「5つのD」と関西電力のDX

 関西地方を中心に電力の安全・安定供給を担う、日本を代表する大手電力会社の関西電力。電気事業だけでなく、再生可能エネルギー、IT・情報通信、まちづくり、海外事業など、エネルギーと暮らしの多岐にわたる分野で事業を展開する総合エネルギー企業である。ゼロカーボン社会実現に向けた取り組みや地域社会への貢献も重視しており、「power with heart」をブランドステートメントに掲げている。

写真1:関西電力 理事 IT戦略室長の上田晃穂氏

 同社のIT/デジタルを牽引する、理事 IT戦略室長の上田晃穂氏(写真1)は、昨今のエネルギー産業の課題「4つのD」を挙げる。

脱炭素化(Decarbonization):CO2削減に向けた取り組み
分散化(Decentralization):太陽光発電・系統用蓄電池など分散する小規模の電源の統合制御
自由化(Deregulation):電力自由化に伴う、電力供給以外の多角的な価値創出
人口減少(Depopulation):労働人口減少に伴う業務効率化

 これら4つのDすべてで解決に向けたカギとなるのが、5つ目のD「デジタル化(Digitalization)」だという。関西電力は2018年6月にDX戦略委員会、8月にはデジタル専業子会社のK4 Digitalを設立し、DX推進体制を整備してきた(図1)。

図1: 関西電力のDXの歴史(出典:関西電力)
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 「2022年のChatGPTの登場で、AI産業革命レベルのことが起こると確信した。それ以前に策定したDX戦略はもう役に立たないものになると感じた」と、生成AI登場時の破壊的なインパクトを振り返る。

 同社は生成AIの業務適用を広げながら、2024年7月に「DXビジョン・DXロードマップ2030」として再構築した戦略とロードマップを策定。活用をさらに前進させるべく、2025年6月にOpenAIとの戦略的連携を発表、10月にはChatGPT Enterpriseを全社展開している(関連記事:関西電力、OpenAIとの連携で生成AI活用を全社推進、火力発電の運転/保全などに適用)。

“JTC”から脱却し、AIファースト企業へ

 DXを通じて関西電力が目指す姿は、「AIファースト企業」だ。上田氏は、年功序列、終身雇用など、伝統的な日本型雇用システムが根強く残る伝統的大企業を指した「JTC(Japanese Traditional Company)」を挙げ、「こういった古い企業体質の印象を持たれがちな電力会社からの脱却を図り、AIを競争優位性の源泉としたい」と述べた(図2)。

図2:JTCとAIファースト企業の比較(出典:関西電力)
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 上田氏は、その道のりをマラソンにたとえ、次のように話した。「かつてのJTCが行く道は、42.195キロ先にゴールがあることが決まっているフルマラソンのようなもの。現在の企業は、走っている途中にゴールが見えなくなる、位置が変わることが日常茶飯事のVUCAの時代に生きている」。

 AIファースト企業はどうかというと、まず100メートルを、仮説を立てて走り、間違っていたら方向を転換して合計422本走るイメージだという。「真のゴールには、AIファースト企業のほうが確実に早くたどり着けると考えている」(上田氏)。

基盤整備と組織風土の「土壌」を重視

 図34は、関西電力が掲げるDXビジョンとDXロードマップだ。DXは中期経営計画を達成するための手段であり、事業部門DXとオフィス業務DXの2段構えで推進している。事業部門DXでは各事業領域におけるバリューチェーン改革での価値創出、オフィス業務DXではAIエージェントと作る新たな働き方による生産性向上を図る。

図3:DXビジョン(出典:関西電力)
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図4:DXロードマップ(出典:関西電力)
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 DXに取り組むうえでは、人材、データ、AIガバナンスで構成するDX基盤の整備も重視。さらにDX基盤の下では組織風土改革にも取り組む。「組織風土改革は家で言うと土壌部分。いくら立派な家を建てても、地盤が柔らかいと傾いてしまう可能性がある。安心して挑戦・失敗できる地盤を作り、その上にDXという家を建てたい」

●Next:DXを推進するための地盤づくり─DX基盤整備と組織風土改革

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