[イベントレポート]
徹底討論・日本のユーザー企業とデータセンター事業者は「デジタル変革」にどう臨む?
2017年2月8日(水)伊藤 秀樹(フリーランスライター)
ユーザー企業のみならず、データセンター事業者自身にも「クラウドシフト」と「デジタルビジネス」への対応が迫られている。海外大手クラウドの攻勢はじめ競争が激化していく中で、国内事業者が市場を生き抜くためにとるべきアクションは何か。そしてユーザーはどんなITインフラを選び取ってビジネス競争優位を築くか。クラウド&データセンターコンファレンス2016-17(主催:インプレス)の終幕講演では、国内外の事業者と専門家が机を並べて「徹底討論・ニッポンのデータセンター/クラウド事業者の生きる道」と題したパネルディスカッションを繰り広げた。
IoT/AIの活用がユーザーと事業者双方にとってのチャンスに
世界中で広範に普及したスマートフォン。モバイルを中心にエンドユーザーのデバイスは今後も進化を続け、社会や消費者の生活様式もさらなる変化を遂げていくことが予想される。こうした連続的な環境の変化は、データセンター/クラウドサービス事業者にとっても大きな変革のチャンスとなっている。
関谷氏は、「ビッグデータ、AI、IoTは特に日本の事業者がユーザーに有用な価値を提示できる可能性の高い分野である」との見解を示した。「特にAIはこれまで数度のブームを迎えては頓挫してきたが、今回は広帯域なネットワークと圧倒的なコンピューティングパワーがある」と関谷氏。また、ユーザー企業にとって、AIやIoTはビジネスの武器にしやすい分野でもあるとして、「そうした要望を具現化できるのがデータセンター事業者であり、デジタルシフトを先導していく役割が今後、ますます求められる」と国内事業者への期待を語った。
渥美氏も、「明治時代、日本人はエンジニアリングにおいて世界トップレベルだった。今後、IoTやAIでデジタルビジネスを推進することで、日本企業が再び盛り上がってほしい」と国内事業者にとってのチャンス到来を語る。
加えて渥美氏は、Software Definedのアプローチやサービス化が進む中で、データセンター事業者において求められる人材像も変容していることを指摘。「引く手あまたなのは、ITの原理原論となる技術・製品を熟知したうえで、ビジネスパーソンと対等に会話もできる人材だ。しかし、この産業に携わる人材の数が絶望的に足らないのが現状。ソフトウェア化やサービス化がもっと主流になっていくに伴い、ここにすぐれた人材が多く集まることを期待している」と語った。
古田氏は、「これまで、この業界でビジネスの成長と言っても、狭い市場の奪い合いだった。これからは市場自体を大きくしていかなければならず、その意味では世界市場に打って出ることは重要だ」と指摘。そのうえで、「デジタルエコノミーの世界で生き残っていくためには、デジタルビジネスにリソースを集中していくことがユーザーと事業者の双方にとって不可欠で、当社としてもその支援を行っていきたい」とした。
石田氏は、データセンター/クラウドサービス事業者だからこそなせる膨大なコンピューティングパワーの提供による価値提供を示した。「例えば、かつて国家研究機関レベルでしか実現しえなかったディープラーニングの民主化。このような形でユーザーのデジタルビジネスの発展を支えていくことが当社の使命であると考えている」と石田氏。加えて、マルチクラウド環境や事業者間連携を含めたオープン化も、国内事業者にとっての重要課題だと指摘した。「AIやディープラーニング領域でも、事業者間の連携でできることがさらに広がっていく。日本のIT活用を盛り上げていきたい」(石田氏)
上野氏も事業者間、企業間連携の重要性に同意した。「今はクラウド基盤の活用から、その基盤上で新しいITサービスを創出していくフェーズに移行しているところ。ユーザーの多様な取り組みを支援していくためには、やはり複数の企業が連携することが重要だ。IoT、ビッグデータの活用促進に向けて連携・連帯を深めて、日本発のイノベーティブなビジネスを支えていきたい」(上野氏)
モデレーターの河原(写真7)は、「議論を通じて、課題山積ではあるけれど、デジタルビジネス時代に日本のユーザーと事業者が今後進むべき方向が見えてきたように思う。聴講されている皆さんそれぞれの強みを発揮するかたちで競争と協業が進むことを強く期待したい」と会場に呼びかけてパネルディスカッションを締めくくった。
(データセンター完全ガイド)