2017年2月の3本:NECと日本オラクルがクラウド分野で戦略的提携/クラウドERPの利用動向をガートナーが発表/IPAなど10団体が中小企業の情報セキュリティ対策を支援
2017年3月7日(火)松岡 功(ジャーナリスト)
2017年2月のニュースから松岡功が選んだのは、「NECと日本オラクルがクラウド分野で戦略的提携」「クラウドERPの利用動向をガートナーが発表」「IPAなど10団体が中小企業の情報セキュリティ対策を支援」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。
クラウドERPへの期待としては「導入コスト」「利用コスト」「セキュリティ」がトップ3となった。一方で懸念事項として「利用コスト」「セキュリティ」「サービスの存続性」がトップ3に挙がっている。利用コストとセキュリティに対しては、期待と懸念が入り交じっている状況が明らかになった。
[選択理由]
クラウドERPの普及が今後10年間で相当進む可能性を示した調査結果として、チェックしておく必要があると考えたからだ。
ガートナージャパンは今回の調査結果を受けて、「企業はクラウドERPに対し、懸念より期待する意向が強い。5年後、10年後の回答から中長期的には何らかの形でクラウドERPを利用する取り組みが主流になる可能性が高いことが明らかになった。ERPの導入に携わるITリーダーは、こうした動向が自社のERP戦略に与える影響を見極めつつ、ERPベンダーの戦略やソリューションのポートフォリオ、ロードマップが自社の方向性と合致しているかどうかを評価すべきだ」と述べている。
クラウドERPの普及は、企業の基幹業務システムのクラウド化が進むことを意味する。ただ、一足飛びにクラウドサービスの利用に進むわけではない。図1にあるように「自社運用型ERPと同程度にハイブリッド利用する」「クラウドERPをBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)ベンダーにアウトソースする」といった利用形態が10年後も一定の割合を占めるとみられる。その中で自社に合った利用形態にどう導くか。IT部門が果たすべき役割は大きい。
IPAなど10団体が中小企業の情報セキュリティ対策を支援
情報処理推進機構(IPA)など10団体が2017年2月7日、中小企業における情報セキュリティ対策の普及に向けた共同宣言を出すとともに、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度「SECURITY ACTION」を4月から実施することを発表した。
共同宣言では、「中小企業のIT利用拡大に向け、情報セキュリティへの意識啓発および自発的な対策の策定、実践を促進するために連携して活動する」と表明。各団体が実施している展示会やセミナー、会報誌などで啓発するほか、情報セキュリティの専門家と連携した中小企業への相談対応の強化などを図る。共同宣言を出したのは、IPAのほか、中小企業診断協会、全国社会保険労務士会連合会、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、ITコーディネータ協会、日本ネットワークセキュリティ協会、中小企業基盤整備機構、日本商工会議所、日本税理士会連合会の計10団体である。
一方のSECURITY ACTIONは、IPAが2016年11月に公開した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の実践をベースに2段階を用意(図2)。中小企業自らがIPAに申請し、Webサイトや名刺に掲示することで取り組みを宣言する。
[選択理由]
これまでにない取り組みであり、中小企業の情報セキュリティ対策の支援策として有効と考えたからだ。
今回の取り組みの背景には、IT化の進展に伴って企業の情報資産の窃取や業務妨害を狙ったサイバー攻撃・犯罪が巧妙化・悪質化し、その対象が政府機関や大手企業だけでなく中小企業にも広がってきていることがある。
こうした背景を踏まえ共同宣言では、中小企業と関わりの深い商工団体・士業団体の全国組織と、IT関連団体および関連施策の実施機関である独立行政法人が、経済産業省と中小企業庁の協力の下に連携。各団体・組織の機能や特徴を生かしながら、中小企業の自発的な情報セキュリティ対策への取り組みを促すことを目的にしている。
興味深いのは、自発的な情報セキュリティ対策を促している点だ。中小企業にすれば、SECURITY ACTIONに取り組むことで公的な“お墨付き”を得る意味合いもありそうだ。本活動がどれだけ広がるのか注目しておきたい。
松岡 功(まつおか いさお)
ジャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)などがある。
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