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[市場動向]

【CeBIT 2017】日独が「ハノーバー宣言」でIoT協働強化へ―安倍・メルケル両首相がトップメッセージ

2017年3月21日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)

2017年3月19日(独現地時間)、独ハノーバーで、IoTを始めとする先端技術分野での日独間連携・協働の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」が採択された。“日本回”として118社の日本企業が出展するCeBIT 2017(3月20~24日、独メッセゲレンデハノーバー)の開催に合わせた発表となった。Industrie 4.0でIoTを世界に先駆けて取り組んだドイツとの協働で、日本の製造業が輝きを取り戻すことはできるのか。開幕前夜の「Welcome Night」セッションに安倍晋三、アンゲラ・メルケル両首相が登場。協働への期待と抱負を語った。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=ハノーバー)

 日本が初の公式パートナーカントリーとなって多数の日本企業がブースを構えたCeBIT 2017。世界最大規模のICTイベントの“日本回”を象徴するビッグトピックの概要が、2国のトップみずからによって明かされた。

 今回、日本のパートナーカントリー参加は、昨年5月の両国首脳会談でのメルケル首相の誘いに安倍首相が応じて実現したものだ。以降、急速に行われた民間への働きかけによって、ジャパンパビリオンの出展企業数は、昨年比10倍となる118社に達した。

安倍首相「互いにつながり協働することで革新が生まれる」

 両国の政府関係者を含む約2000人が参加したCeBIT 2017のWelcome Nightセッション。安倍晋三首相(写真1)は、新しい産業革命期に「互いにつながり協働すること」の重要性を訴えた。

 機械がAIの進展によって単一/用途特化型から、人類のあらゆる領域の問題解決の使命を担うようになったことから、「1個の機械でも、1社の技術でもできない。そして1つの国だけでも、できないことばかりである。つながりをことのほか大切にしなくてはならない」と強調。機械と機械、システム間の連携、それらと人間との関係、企業・国家といった集団同士の関係など、あらゆるつながりについて、政府・産業・学会が知恵を絞って協働し、イノベーションの創出につなげたいとした。

写真1:安倍首相はAIの可能性に期待しつつ、「日本はAIを恐れない。機械が職を奪うという不安は日本には無縁」とも言い切った

 その際に求められるものとして、安倍首相は人材育成と共通・標準化された規格を挙げ、両国にはそれらをうまく実現できる共通の要素があると語った。「なぜなら、ドイツ人も日本人もものを作ることに誇りを託し無上の喜びを感じるからだ」(安倍首相)

 また、安倍首相は、もう1つの共通点として「どちらの国もイノベーションの担い手にすぐれた中小企業が存在する」ことを挙げた。中堅・中小企業の交流促進をメルケル氏と以前から話し合ってきたという。今年2月にドイツの新興メーカー、フランカエミカ(Franka Emika)が開発したロボットに大きな感銘を受けた安倍首相は、「今回のCeBITでは日本の中堅・中小企業も同様に驚きの輪を広げてくれるに違いない」と語った。

メルケル首相「国家として、国民をデジタル社会に連れていく」

 安倍首相の協働の呼びかけに応じる形でステージに上がったアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相(写真2)。CeBITが2015年から掲げるイベントスローガン「D!conomy」に関連し、すべての社会的な側面においてデジタル化を実践することが重要だと説いた。

写真2:メルケル首相は、ドイツ郊外でのネットワークインフラの整備遅れなど課題も口にしながらも、「国民をデジタル社会に連れて行く」ことを約束した

 「IoTをはじめとした各種規格の標準化なくして、社会全般のデジタル化は望めない。まずはEU連合の中で標準化が必要。国境があって、そこで周波数が変わってしまうという今の状況を早急に解決しなくてはならない」(メルケル首相) メルケル首相は以前より、社会全般のデジタル化を必須課題として挙げてきた。2017年のG20首脳会議の議長国を務めるドイツは、4月6・7日にデュッセルドルフで予定されているG20を初のデジタル化担当相会議として開催する。「これは今の時代を象徴する取り組みで、標準化された規格に基づいたデジタル化プラットフォームを実現したい。人々の役に立ち、社会のメリットになる進歩を成し遂げるための一歩になる」(メルケル首相)

 最大の課題は、ITリテラシーに関係なく、すべての人々をデジタル社会にしっかり連れていくことだとメルケル首相。「例えば、クラウドネットワークへのアクセスとデジタル化に関する教育は欠かせないだろう。国家として、国民に21世紀に求められる能力をしっかり提示していく必要がある」

 (ハノーバー宣言における)協働の枠組みの中には競争も含まれているというのがメルケル首相の見解だ。「日本は友好国でもあり、競争相手でもある。我々が日本からいくつか学べることがある」と語り、その1つとして技術活用に関するオープンなスタンスを挙げた。例えば日本では高齢者の介護にロボットがすでに使われているが、ドイツではそうした取り組みにはまだ控え目だという。「日独で交流してデジタル社会の経験について話し合う機会が増えれば、多くの分野でお互いがより深く学べるようになると期待している」(メルケル首相)

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