インプレスは2017年3月10日、IT Leaders特別セミナー「盤石なデータ管理なしに企業競争力は生まれない!─ デジタル革新に向けた本当の起点とは ─」を都内で開催した。本稿では、当日の主要なトピックをレポートする。
価値の最大化&リスクの最小化
HPEが提示する「企業価値を高めるデータ管理基盤のあり方」
続くセッションに登壇したのは、日本ヒューレット・パッカード(HPE)でインフォメーション・マネジメント営業本部の本部長を務める春木菊則氏。テーマに据えたのが「企業価値を高めるデータ管理基盤のあり方」だ。
春木氏はまず、「データの増大がもたらす価値とリスク」という観点で口火を切った。IoTの隆盛を筆頭に、企業を取り巻くデータは今後、数も種類も加速度的に増加するのは間違いない。それらを巧く活用することができれば競争力になることは言を俟たないが、その一方で、リスクもまた膨れ上がっている点を見逃してはならないという指摘である。
EUにおいて2018年5月施行開始に向けて動き始めた一般データ保護規則(GDPR)、トランプ政権誕生で緩和が噂されながらも今なお米国での金融機関を厳しく締め付けているドット=フランク法など、各国にはデータの取り扱いに関わるルールが存在する。故意や過失で機密情報の漏洩があったり、何らかトラブルを起こした時の証拠提出に不備があったりした際に、企業が被る負のインパクトは甚大だ。
もちろん、データの管理や統制に対する取り組みが手つかずであったわけではなく、特に基幹業務システムといわれる領域においてはIT部門が中心となって様々な策を講じてきた。とはいえ、企業内のシステムは規模も複雑さも増す一方であり、思わぬ所に死角が広がっているとも言える時代を迎えている。
春木氏が例としてフォーカスした一つが従業員が日常的に使っているPCだ。そこには日々の業務遂行に欠かせないデータや、時として機密に触れるデータが存在しているが、所定のポリシーの下できちんとバックアップするなどのガバナンスを効かせているケースは決して多くない。ある調査では6割強の企業が後手に回っており、実践している企業においても、属人的な運用でまかなっている例が少なくないとの報告がある。
個人PCと同様に、業務に密接にからむデータが保存される場所としてファイルサーバーがある。ここでは権限管理や定期的バックアップなどの手立てが講じられているのが一般的であるにせよ、中身の整理まで踏み込んでいることは希だ。結果、「容量不足が慢性化し、ストレージの追加や運用負荷増大などがコストにそのまま跳ね返ります。しかも、こうした無秩序な状態が、データ活用高度化の足かせにもなるし、データ保護/保全などの観点で危うさを拡大させているのです」(春木氏)。
では、データの管理や統制をどのように高度化させていけばよいのか。春木氏は「社内のどこに、どんな種類のデータが保管されているのかを可視化して分類することがすべての起点となります」とアドバイス。さらに、「データの生成、流通やアップデート、活用、廃棄といったライフサイクル全体をとらえて、コントロールや体系化の枠組みをあてはめていくのが基本的なステップとなります」と続けた。
機密性の高いデータの厳格な管理や保全、整合性を欠いたり重複したりするデータの抽出や統合、散乱するデータの集約や重要度判別…目的に応じたソリューションを適用することで、データは“マネージドな(適正管理された)”状態へと持ち込むことができる。さらにデータは一般的に、時間経過と共に参照価値が漸減していく。「情報の価値と管理コストのバランスをとり、最適な保管場所でハンドリングする施策もまた不可欠な取り組みとなります」(春木氏)。
つまりは、データをビジネス価値に照らして適材適所に保管せよ、という指摘だ。頻繁にアクセスして意思決定に役立たせるデータならば、ハイエンドのストレージに置くのが理にかなう。もはや滅多に参照することがなくなったデータならば、安価な媒体にアーカイブするといった具合だ。業務直結のデータ群を高速なストレージに集約できれば検索・参照は速くなるし、それらをバックアップする時間や手間も大幅に削減できる。ここでは、「データの特性に応じた最適配置」を所定のポリシーに則って自動化するソリューションが大いに役立つ。
データの可視化と分類、さらには保管場所の最適化。メリハリを効かせた一連の施策は、データのハンドリングに関わるコストの圧縮に寄与するのはもちろんのこと、データに対する社内の関心・感度を引き上げ、最終的には「活用や統制のレベルアップ」を図ることにつながるのである。
春木氏は、HPEが市場展開している具体的ソリューションにも言及。従業員が使うPCのデータバックアップに焦点を当てた「Connected Backup」、ファイルサーバー内のデータの可視化や最適化などに役立つ「ControlPoint」や「Storage Optimizer」、業務システムのデータをアーカイブし、そのRDBやアプリケーションに依存せずにデータの参照を可能にする「Structured Data Manager」などの機能概略とユーザーにとってのメリットを分かりやすく解説した。
さらに、HPE自身やNOKIA、大手銀行など、これらのソリューションを活用しているユーザー事例を紹介し、具体的な効果を訴求。「当社には、データの管理や統制に関わる市場で長く経験を積んできた自負と責任があります。さまざまな課題やお困りごとに対処する製品と体制を整えているので、是非相談ください」と講演を締めくくった。