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[市場動向]

社内ソーシャルの成否はコミュニティ形成にあり

組織力強化のために長期戦を覚悟し、地道な取り組みを

2017年6月14日(水)森 英幸(IT Leaders編集部)

組織におけるコミュニケーションの活性化を目的に社内ソーシャル(社内SNS)を導入する企業が徐々に増えている。もっとも、導入当初は話題性も手伝って活況だったものの、次第に書き込む人が減ってしまい定着に苦労しているというケースは少なくないようだ。そこで本稿では、社内ソーシャルに求められる役割を見直したうえで、それを定着させるプロセスについて考察したい。

社内ソーシャルの定着は一朝一夕にならず

 働き方改革やワークスタイル変革の目的には、「生産性の向上」や「ワークライフバランスの実現」、「ダイバーシティの推進」などがあるが、中でも重要となるのは生産性の向上であろう。

 生産性が上がれば、労働時間を短縮することが可能となってプライベートを充実させる余地が生まれるし、育児や介護で時短勤務せざるを得ない社員でも、限られた時間で成果を出すことが可能になる。すなわち、生産性の向上は、それ自体も目的でありながら、他の目的を達成するための基本要件でもあるのだ。

 さて、生産性の向上に向けた施策にはいろいろあるが、その中に「ITツールを活用した社内コミュニケーションの活性化」がある。メール偏重のコミュニケーションを見直し、新しいツールを適材適所で活用することで、業務のスピードアップを図ろうというアプローチだ。

 円滑なコミュニケーションを支援する新しいツールとしては、チャット、社内ソーシャル、クラウド・ストレージなどが挙げられるが、このうち社内ソーシャルは扱いが難しい。

 「気軽にリアルタイムに近いやり取りができるチャット」、「大容量のデータでも簡単に共有できるクラウド・ストレージ」といったように、他のツールはその効果が比較的単純で理解しやすい。これに対し、社内ソーシャルはいささか複雑だ。

 社内ソーシャルの導入検討時に、担当者が夢見る理想的な活用シーンとは次のようなものだろう。

  • ある社員が作成した資料を投稿し、他部署の社員がそれを見て問題点を指摘。異なる視点からの意見を得て、より良い資料が作られる。
  • 社員が業務で困っていることを投稿すると、つながっている他の社員がアドバイスをくれる。あるいは、アドバイスをくれそうな別な社員を紹介してくれ、業務がスムーズに進む。
  • 社内ソーシャル上でのやり取りから新しいアイデアが生まれ、部署を横断したプロジェクトが発足。新規ビジネスとして成長していく。

 これらは社内ソーシャルのセールストークによくあるサクセスストーリーの一例だが、現実はそれほど甘くない。そもそも、顔見知りでもない人の投稿を見に行く動機はなかなかないし、見たとしても関係性が希薄な相手に何かコメントを付けるほど、日本人のメンタリティはフランクではない。

 要するに、上記のような効果が得られるのは、社内ソーシャル上にコミュニティが形成されている場合だけである。コミュニティが存在しない状態でツールだけ提供したところで、活発なコミュニケーションが行われるわけがないのだ。このことから直感的にわかるように、社内ソーシャルの定着には、根気強い取り組みが必要になる。導入担当者は、長期戦になることを覚悟しておかなければならない。

社内ソーシャルの役割は組織体質の改善

 社内ソーシャルをどう定着させるかを議論する前に、そもそも何のために社内ソーシャルを導入するのかに立ち返って考えていただきたい。

 社内ソーシャルは、情報の共有・交換のためのツールであるが、文書管理やメッセージなど、提供される個々の機能を並べてみると、グループウェアとあまり変わりがない。見方によっては「グループウェアを今時の技術で作り直したもの」ということもできる。では、グループウェアと社内ソーシャルの違いとは何か。

 実は、グループウェアと決定的に異なるのは、機能ではなく運用スタイルであり、社内ソーシャルでは、組織の枠を意識的に排除した運用がなされるという点である。一般的にグループウェアでは、組織の枠に沿って共有フォルダーが作られ、文書へのアクセス権限も部署・職位に準じて割り当てられる。

 対する社内ソーシャルでは、社員と社員が部署や職位にとらわれず、任意につながり、情報を共有する。そうした部署の垣根を越えたコミュニケーションを促進することが、社内ソーシャルの得意とするところであり、社内ソーシャルに期待されることであるはずだ。

 縦割り組織の場合、10人×10部署の組織が1つの仕事に対して発揮できる力は、1部署の10人分にとどまる。これを横方向に連携できれば、100人分とまではいかないまでも、20~30人分の力を出せるようにはなるだろう。縦割りの組織に、横串を通して風通しを良くし、組織力を強化することが社内ソーシャルの本質的な役割と捉えるべきだ。サクセスストーリーに見られるような導入効果は、組織力が強化された結果、副次的に得られるものにすぎない。

まずは仕事から離れよう

 さて、社内ソーシャルに部署の垣根を越えたコミュニケーションを期待するのであれば、部署の垣根を越えたコミュニティを形成しなければならない。だが、オンライン上でコミュニティを作ろうとしてもなかなかうまくいかないものだ。

 定着に向けた現実的アプローチを探るにあたっては、例えば、社内サークル活動を奨励し、その活動拠点として社内ソーシャルを使うという方法が効果を発揮することがある。社内サークルは、多かれ少なかれ大抵の企業に存在するが、その活動内容はサークル外からは見えにくいものである。自分の会社にどんなサークルがあるのか知らないという人も多いだろう。そこで社内ソーシャルという公開の場を拠点として使わせれば、サークル内の雰囲気が外にも伝わるようになる。

 社内サークル活動の奨励策としては、次のようなものが考えられる。

  • 3人以上の参加者がいれば設立を認めるなど、サークル立ち上げのしきいを下げる
  • 社内サークルに対し、業務時間外の会社設備(会議室など)の利用を許可する
  • 活動費の半額を会社が負担するなど、金銭的な支援を行う
  • 活動費を申請する際は、社内ソーシャルで活動報告を行う(写真付き)

 このような奨励策で社内サークルの数を増やす。例えば、仲のいい社員同士で今度ボウリングに行こうとなったときに、「同じボウリングをするなら、サークルを立ち上げて補助金をもらったほうが得だ」と思わせることができればしめたものだ。

 最初は補助金目当てだとしても、様々なサークルの楽しそうな活動報告が社内ソーシャルにあふれるようになれば、自分も参加したいという気にもなるし、自分の趣味にあうものがなければ作ってみようと思う社員も増えるだろう。趣味のサークルだけでなく、「イクメンパパの会」があってもいいし、フリーマーケット代わりに利用してもよいだろう。社員同士のつながりが広がるのであれば、大歓迎である。

 業務に直接関係のなりサークル活動の話を取り上げたが、インフォーマルな付き合いの中で“心通う仲間”が増えることに意味がある。「彼の書き込みだから、じっくり読んでおこう」「彼女の困りごとだから、何か力になれないものか」──。そんな気持ちを自然に誘発するきっかけになればしめたものだ。

何かを始めるときは何かをやめる

 「何を書けばいいのかわからない」――社内ソーシャルを導入した企業の社員がよく口にする言葉である。社内サークルの活動拠点としての利用は上策ではあるが、それで十分ではない。サークル活動を行っていない社員も、日常的に社内ソーシャルに触れるように仕向ける必要がある。

 そこでぜひおすすめしたいのが、社内ソーシャルの投稿を使った業務報告である。業務報告にメールを使用している場合、その情報は部署内に閉ざされている。社内ソーシャルを利用すれば、誰がどんなことをしているのか、誰でもチェックできるようになる。

 もっとも、自発的にチェックさせる必要はない。社内ソーシャルのトップページやサイドバーに、全社員の投稿が表示されるようにしておけばよい。見に行かなくても目に触れる状態にするわけだ。

 この「目に触れる」という距離感が重要である。もし、全社員の業務報告が全社メールで飛び交っていたとしたら、それはもはや迷惑メールでしかない。業務ツールとしてメールが機能しなくなってしまう。一方、社内ソーシャルの場合、基本無視しておいて、ふと気になったものがあったら読むというスタイルでよい。

 業務報告は、週報では間隔が空きすぎるので、日報レベルにするのが望ましい。業務報告で毎日投稿する習慣が身に付いてくれば、報告だけでなく、相談ごとなども投稿しやすくなる。それに答えるのは、上長や同じ部署の同僚ということがほとんどであろうが、もし、社内サークルで横方向のつながりができていれば、サークル仲間がコメントをくれることもあるだろう。それは、的はずれなコメントかもしれないが、自分のことを気にかけてくれる人がいるというのは、それだけで嬉しく、仕事の励みになるものだ。

 最後に、この例(メールによる業務報告をやめて社内ソーシャルに切り替える)で示したように、何かを始めるときは、何かをやめることが基本ルールである。例えば、社内ソーシャルをナレッジベースとして利用する決定を下したならば、既存のナレッジベースを廃止し、速やかに情報を社内ソーシャルに統合すべきである。ツールの移行は混乱を招くが、それは一時的なものにすぎない。同じ目的の異なるツールが並立している状態は、混乱を長引かせ、業務効率を著しく低下させてしまう。

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