2017年5月の3本:世界規模でのサイバー攻撃が発生/「2017年はOpenStack普及元年に」とIDCが予測/日立がメインフレーム製造から撤退
2017年6月14日(水)松岡 功(ジャーナリスト)
2017年5月のニュースから松岡功が選んだのは、「世界規模でのサイバー攻撃が発生」「『2017年はOpenStack普及元年に』とIDCが予測」「日立がメインフレーム製造から撤退」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。
[選択理由]
OpenStackはAmazon Web Services(AWS)に対抗するクラウド基盤として開発されてきた背景があるだけに、果たしてAWSを追撃するほどの存在感を示すことができるかどうか、注目されるからだ。
日本OpenStackユーザー会が2017年5月17日に開いた記者説明会では、OpenStackの現状について、大手ベンダーをはじめ世界185カ国の企業や団体が開発および普及活動を支援。7万3000人を超えるエンジニアがオープンソースを通じて開発に携わっており、既に500万を超えるコンピューティングコアで利用されているという。とくに、「2016年から2017年にかけての導入数が44%増加し、フォーチュン100企業の半数に利用されるようになった」と強調した。
また、OpenStackの利用形態については、「当初は大手ネットサービスベンダーが大規模なプライベートクラウドに適用する形でスタートしたが、最近では規模に関係なく容易に多様なユースケースに適用できるプライベートクラウド基盤として利用されるようになってきた。その中で新しいサービスも出現してきた」と説明した。
その新しいサービスとはすなわち、「プライベートクラウド・アズ・ア・サービス」である。同会では「OpenStackは今後、このサービス形態を軸に、多様なユースケースに応じてきめ細かく利用できるようになるだろう」と見ている。どうやら、このサービス形態が今後のOpenStack普及の大きなカギを握っているといえそうだ。
日立がメインフレーム製造から撤退
日立製作所が2017年5月23日、IBMとメインフレームのハードウェアに関する協業について合意し、IBMからハードウェアの供給を受けた日立仕様のメインフレームを2018年度より提供開始すると発表した。
日立とIBMは2001年から、日立メインフレームの専用OS「VOS3」に対応する半導体チップの共同開発を行うなど協力関係にあった。今回、その協業範囲を拡大することにより、日立は、グローバルにメインフレーム事業を展開するIBMの最先端技術を活用して、VOS3を基盤とする日立仕様の高品質・高信頼・セキュアなメインフレーム環境を継続的に提供するとしている。
[選択理由]
コンピュータの歴史における節目の1つと考えるからだ。上記は日立の発表文を基にしているが、報道では「日立がメインフレーム製造から完全撤退、55年超の歴史に幕」および「日立が大型コンピュータ撤退、ソフト開発は継続」と、「撤退」を前面に押し出した記事が目立った。
メインフレームはさまざまな業務において大量のデータを処理できる信頼性の高い大型コンピュータとして、1950年代に登場して以降、幅広く利用されてきた。中でも日本市場は、メインフレームの巨人だったIBMに対抗すべく、富士通、日立、NECなどのメーカーがしのぎを削る激戦区となってきた。
ただ、1990年代からオープンシステムやクライアントサーバモデルが台頭し、コストパフォーマンスで競争力を失ったメインフレームの市場は縮小。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、1990年代半ばに1兆円超あったメインフレームの国内出荷金額は、2016年度には315億円まで落ち込んだ。日立がメインフレーム製造から撤退したのは、こうした背景がある。
とはいえ、業務アプリケーションが作り込まれていることなどから今も利用されているメインフレームは、企業の基幹業務や社会インフラを担っているケースが大半なだけに、最近のデジタル技術とどう連携させていくかが課題となっている。日立は今回の新たな取り組みを機に、メインフレームをIoT(Internet of Things)プラットフォームとして活用することを考えているようだ。それをきっかけにIBMともIoT分野で緊密に連携する関係になるかもしれない。
筆者プロフィール
松岡 功(まつおか・いさお)
ジャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)などがある。
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