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[イベントレポート]

51の事例から見えるRPAの実像とは?

RPAは、従業員の働き方をどう変えるのか

2017年8月25日(金)森 英幸(IT Leaders編集部)

PCにおける定形作業をソフトウェア・ロボットで肩代わりするRPA(Robotic Process Automation)は、働き方改革における労働時間短縮の切り札としても注目を集める技術である。その一方で、RPAやAIの発達が人間から職を奪うのではないかという不安を生み出していることも事実だ。そこで本稿では、RPA研究の第一人者と目されているロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のレスリー・ウィルコックス教授の講演をもとに、RPAの実像に迫ってみたい。

RPAによって職が奪われた事例は1つもなかった

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコックス教授 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコックス教授

 「RPAは人間の作業からロボット的な部分を取り除くもの」とレスリー・ウィルコックス教授は言う。

「産業革命以降、135年間にわたって、人間はロボットのように働かされてきた。RPAによって人間は、仕事の楽しさを取り戻すことができる」(ウィルコックス教授)。

 ウィルコックス教授の講演は、今年7月のRPA Summit 2017で行われた。講演の内容は、ウィルコックス教授が中心となって行われた、RPAのユーザー企業51社を対象とするフィールドサーベイに基づくもので、RPAの導入で従業員の働き方がどう変わったか、RPAをスムーズに導入するためのポイントは何かといったことがつぶさに語られた。

 ウィルコックス教授が最初に紹介したのは、世界有数の保険会社、ロイズ・オブ・ロンドンの事例だ。300以上の保険仲介業者を擁する同社では、LPAN(ロンドン保険料通知)と呼ばれる保険契約書の発行業務にRPAツールの「Blue Prism」を導入しているという。作業内容は、案件ごとにテンプレートに沿って項目を入力して契約書を発行するというもので、従来は500件の発行処理に丸2日かかっていたが、RPAの導入により30分に短縮されたそうだ。

「仲介業者は待ち時間が2日から30分に短縮されてより早く手数料を得られるようになり、契約者もすぐに契約内容が確認できるようになった。そして、ロイズは迅速なサービス提供で顧客満足を向上させることができた。まさにトリプル・ウィンだ」(ウィルコックス教授)。

 では、これまで契約書発行業務を担当していた社員はどうなったのか。現在、その社員はRPAツールがエラーを返して処理できなかった部分を担当しており、インタビューではRPAツールにとても満足していると語ったそうだ。

 アマンダ・パースというその女性社員は、PCの中にいるRPAツールに、自身でイラストを描いてキャラクター化し、「ポピィ」という名前を付けて、信頼できる同僚として扱っているという。

ロイズ・オブ・ロンドンの保険契約書の発行プロセス(ピンクがRPAで自動化した部分)と、社員がRPAツールをキャラクター化したイラストロイズ・オブ・ロンドンの保険契約書の発行プロセス(ピンクがRPAで自動化した部分)と、社員がRPAツールをキャラクター化したイラスト
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 ウィルコックス教授がバックオフィス業務へのRPA適用の成功事例として取り上げた欧州の通信事業者テレフォニカ/O2では、バックオフィス業務の35%の自動化に成功し、月100万トランザクションをRPAで処理しており、3年間での投資利益率(ROI)は650~800%にも達するという。また、欧州の電力会社Npowerも、同じく35%のバックオフィス業務を自動化し、月300万トランザクションを処理、ROIは1年で200%になった。

 RPAの導入は、バックオフィスだけでなく、対人サービスにも浸透しつつあり、例えば鉄道会社の英バージン・トレインズは、クレーム処理にRPAを導入することで、32人時間を4人時間へと短縮し、同時にサービス品質の向上にも貢献したという。

 RPA導入事例の多くでは、デリバリーの時間短縮、サービス品質の向上、コンプライアンスの向上といったビジネス価値の向上が見られる。このうち、2つ目のサービス品質の向上には、顧客対応時間の拡大やサービスのスピードアップといったRPAによって直接的に得られる要因も含まれるものの、RPAによって削減できた時間をより手厚いサービスに回すことが品質向上につながっているケースが多いという。

 「RPAによって、人手を削減できるというストーリーはもちろんありえるが、それはRPAの制限された利用形態でしかない。RPAを使えば、ルーチンワークで消費していた時間をほかのことに振り分けることが可能であり、人間は深刻な問題により多くの時間を使えるようになる。メディアはRPAによって多くの人が職を失うと煽りがちだが、我々が調査した、失敗事例も含む51の事例の中に、そのような事実は見られなかった。また、多くの企業で従業員満足度も向上している。多くの事例を見てきて断言できるのは、RPAに関する不安は杞憂だったということだ」(ウィルコックス教授)。

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