社内外の情報やデータをバラバラにサイロで利活用するのではなく、構造化データと非構造化データを紐づけ、ビジネスプロセスを横串で貫いて活用することで、はじめてデジタル時代における全社的イノベーションが可能となる。「データマネジメント2018」にて、この全体最適に基づくポートフォリオに機械学習やビッグデータ、IoTなどの先端技術を統合し、デザインシンキングによるイノベーションカルチャーを創出するSAPの新戦略「SAP Leonardo」が紹介された。
SAP自身の変革から生まれたSAP Leonardo
SAPは、横軸にデータをつなげ、プロセスを変革し、価値を生み出すフレームワークとして「SAP Leonardo」を新たにリリースした。
背景にあるのは、米コロンビア大学ビジネススクール准教授のリタ・マグレイス氏が著書「競争優位の終焉」で説いた「もはやポーターの理論だけでは生き残れない。瞬時に強みが崩れ去り、中核事業が消え失せる。旧来の常識が通用しない時代を迎えた中で、エコシステムの拡大、連続的イノベーション、時代にあわせたコアコンピテンシーの変化が求められている」という考え方だ。
SAPジャパン マーケティング部 Head of SAP Leonardo Marketingの神山峰郎氏は、「マグレイス氏のこの説にSAPの経営陣が共鳴し、『SAP自身も変わる必要があり、お客様に提供するソリューションやサービスも変えていかないといけない。もっとアジャイルかつフレキシブルにならないといけない』と、変革を追求してきました」と語った。そうした自らの取り組みから体現したのがSAP Leonardoというわけだ。
ITを活用して個々の業務にイノベーションを起こすことも重要だが、本当に必要なのはさまざまな業務や組織、人材を横断的につないだビジネスプロセス全体のデジタルトランスフォーメーションである。「全体最適の考え方を基づいたポートフォリオに機械学習やビッグデータ、IoTなどの先端技術およびデータインテグレーションサービス、クラウドサービス、各種ライブラリ、コンサルティングサービスなどを統合し、包括的に提供するのがSAP Leonardoです」と神山氏は説明する。
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イノベーションをターンキーで実現するフレームワークへ
SAP Leonardoが目指すのは、デザインシンキングによるイノベーションカルチャーの創出である。エンドユーザーを深く観察することで共感を得て、問題を定義し、それを解決するアイデアを創出し、スピーディーなプロトタイピングを行い、検証するというデザインシンキングのOODA(Observe、Orient、Decide、Act)のサイクルを支援するのだ。
「その意味でSAP Leonardoは、イノベーションをターンキーで実現するためのフレームワークと言い換えることができます」と神山氏は強調する。
グローバル38万社の顧客企業の業務分析から得られた知見として、多くの企業が目指しているイノベーションの80~90%は標準化が可能であり、時間をかけることなくリーズナブルなコストで繰り返し実行することができるという。
具体的にSAP Leonardoは、大きく「アプリケーション」「テクノロジー」「基盤(PaaS)」「ファシリテーションサービス」の4つの基本要素から構成されている。これらがExpress Edition、Open Innovation Edition、Enterprise Editionという3つのエンゲージメントモデルに基づくSAP Leonardoイノベーションサービスとして包括的に提供されるのだ。
また、単にフレームワークを提供するだけでなく、顧客とのコ・イノベーションを創造・加速させる場として「SAP Leonardo Center」の開設を進めている。すでにバンガロール、パリ、ニューヨーク、ブラジルの4か所が稼働を開始しており、「今年の後半から来年にかけて東京にもSAP Leonardo Centerを開設する予定です」(神山氏)。
あらゆる業務に機械学習を適用し、バリューチェーンを変革
SAP Leonardoは「Connected Products」「Connected Assets」「Connected Markets」といったコネクテッドアプリケーションを体系化するとともに、それを支えるテクノロジースタックとして、デバイス管理、コネクティビティ、メッセージング、シングモデル(デジタルツイン)、AI、ビッグデータ&アナリティクスなどのファウンデーションを部品として利用可能な状態で取り揃えている。また、それらをデリバリーする基盤としてSAP Cloud PlatformによるPaaSがあり、さらにその周辺にはエッジコンピューティングに対応したポートフォリオまで用意されている。
この中で特に注目すべき機能のひとつが、機械学習の「SAP Leonardo Machine Learning」だ。マーケティング、販売・サービス、デザイン、運用・保全、インバウンドロジスティクス、アウトバウンドロジスティクス、財務、人事などのあらゆる業務に対して機械学習の適用を図り、バリューチェーン全体に潜む非生産的領域を変革していく。
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「機械学習を組み込んだコネクテッドアプリケーションが、SAP S/4 HANAと疎結合で連携することで、変化に迅速かつ柔軟に対応できるITのアーキテクチャーを実装できます」と神山氏は強調した。
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たとえば「SAP Cash Application」というコネクテッドアプリケーションは、過去の履歴からマッチング基準を機械学習によって抽出し、請求書に対する入金消込の処理を自動化する。また、「SAP Brand Impact」は最新の画像認識技術を利用し、動画や画像におけるブランドの露出を自動的に分析する。これにより代理店や制作会社は、スポンサー契約や広告の投資対効果に対する正確で迅速な知見を得ることが可能となる。
これまで主要先進7か国の中でも労働生産性が著しく低いと言われてきた日本企業だが、細かな改善を積み重ねることで余力を生み出せば、そのリソースをイノベーションに振り向けることが可能となる。そうした日本企業の変革をSAP Leonardoを通じて後押ししていくという。
●お問い合わせ先
SAPジャパン株式会社
SAPジャパンホームページ http://go.sap.com/japan/index.html
Webでの問い合わせ先 https://go.sap.com/japan/registration/contact.html
電話での問い合わせ先 0120-786-727(受付時間:平日 9:00~18:00)
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