内田洋行は2018年6月11日、働き方変革をテーマにしたイベント「Change Working Forum 2018」を開催した。本稿では、同社の執行役員で知的生産性研究所 所長を務める平山信彦氏の講演「チェンジ・ワーキング~イノベーションを生み出す組織をつくる」の内容についてレポートする。

働き方変革の第一歩は「仲間を褒める・認める」こと

 それでは、このような日常的なイノベーションを起こせる企業風土を醸成していくためには、どのような組織のあり方が必要なのか。

 平山氏は、「新しいものを生み出したい、世の中に貢献したい、面白いものを作りたい、といった従業員の想いこそがイノベーションの原点となる。そうした想いを業務の中で表出できるような、明るくて元気な組織、あるいはアイデアの原石を皆が集まり磨き上げて宝石にしていくような組織がイノベーションを創出できる。しかし、そうした組織作りに向けた意識変革を上意下達によって強制するようなやり方では効果は期待できない。ヒトの意識は他者によってそう簡単には変わるものではないからだ。対して、従業員が日常行動の1つ1つを見直していくことで、意識変革が起こせるようになる。これを私たちは“行動起点での風土変革”と呼んでいる」と説明する。

 以下は、平山氏が行動起点での風土変革を生み出す組織の行動例として挙げたものだ。

  • 短時間でもよいので自由に意見交換できるようなワイガヤ(ワイワイガヤガヤと話し合う)をする
  • 定型的な会議をやめ、必要な人だけが集まってアイデアを出し合える打ち合わせをする
  • 頭に思い浮かんだことを、まず試してみる
  • 何か問題が起きたり物事を思いついたりしたら、短い空き時間でもよいのですぐ集まる
  • 社内外の人々と広く交流する、そのための機会となるイベントを開き参加していく
  • 業務のプロセスを見直し、不要な仕事をやめる
  • 仲間を褒める、認める

 「最後に挙げた『仲間を褒める、認める』だが、そうした風土の中でこそコミュニケーションが活性化され、イノベーションが生まれやすい土壌ができあがる。ここからスタートするのも働き方変革の1つの進め方だ」と平山氏は提言する。

 「具体的には、どんなに忙しくてもチームのメンバーから相談されたことをしっかり聞く。提案に真剣に耳を傾け、そこに面白い、あるいはイノベーションの種を感じ取れる要素があるようなら褒める。また、何か自分がアドバイスできる要素があれば助言する。このことをマネージャーが心がけるだけで、社内の雰囲気はガラっと変わる。まずは日々、できることからスタートしていこう。働き方変革は本塁打狙いではなく、一塁打をたくさん打っていくことから始めるのが肝要だ。こうした動きが社内に広がっていけば、全社的な働き方改革という、より困難なテーマへチャレンジするための加速力となっていく」(平山氏)。

経営者と従業員が両輪となって働き方改革を推進

 そして一塁打を量産していけるよう、企業として取り組むべきことが、従業員をサポートするための人事制度の見直しやITおよびオフィスやファシリティ等の整備、環境整備となる。

 「環境整備を進めていくうえで、一番重要なことは『本気で働き方改革を進める』という経営者による明解なメッセージの発信だ。働き方変革の成功要件を1つ挙げるなら、経営トップのコミットと現場の従業員の動きを両輪として組み合わせること。経営トップの役割は変革に対する強い意志、方向性をしっかり打ち出していくことにある。ただし、経営トップが箸の上げ下げまで指示したのでは組織の変革、ひいては働き方改革を推進できない。あくまでも実際の動きは現場の自立性、自発性に任せることが重要だ」(平山氏)。

 最後に平山氏は、働き方変革では一斉に社員が変化していくことはレアケースであり、アーリーアダプターと呼ばれる変革に前向きな従業員が現れ、変革を推進するエンジンとなり、やがて全社員へとその動きが伝わっていくと説明する。

 平山氏は「経営と現場の従業員は変革に向けて、明確な役割分担を行いながら、変革のコアとなるアーリーアダプターを育てあげ、推進力となってもらえるようにしていかなければならない」と強調した。