オフィスにDigital Labor(デジタルレイバー)が増殖している――当然のことながら人間離れした処理スピードと正確性を合わせ持つのが仮想的知的動労者のデジタルレイバーだ。その卓越した能力は、日本においても多くの企業の生産性向上に寄与している。デジタルレイバーを生み出すRPA(Robotics Process Automation)は、御多分にもれず海外製品が主流となっているが、海外ブランドひしめく中、存在感を示している国産RPAがある。それが「WinActor(ウィンアクター)」だ。
RPA製品「WinActor」の歴史をさかのぼると、NTTアクセスサービスシステム研究所(ANSL)が開発したUMS(Unified Management Support System)にたどりつく。ANSL R&D TimesやNTTグループの技術誌であるNTT技術ジャーナルで紹介されたのが2011年のこと(図1)。日本にはRPAという言葉も概念もなかった時代だ。
研究所で「UMS」として誕生
UMSは、「エンドユーザーが作成したシナリオに基づき、操作端末への入出力操作と、業務システム間のデータ連携を自動実行できるソフトウェア」「システム開発の為のコーディング技術を必要とせず」などと説明されており、RPAの特徴を備えていることがわかる。
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2013年刊行のNTT技術ジャーナルでは、NTT東日本やNTT西日本傘下のNTTフィールドテクノ、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモなど、NTTグループ内でUMSを業務効率化に活用している事例の数々が紹介されている。
そして、NTTグループのNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)がこのUMSを製品化し、「WinActor」の製品名で世に出したのが2014年1月。当時は「Windowsアプリケーション操作自動化ツール」として売り出されていた。この製品化されたUMSをリマーケティングし、「RPAツール」として売り出したのがNTTデータだ。同社は2017年1月に推進チームを立ち上げ、本格展開を開始している。
NTTデータでWinActorの旗振り役を務める中川拓也氏(写真1)の当初の所属は第二公共事業本部のOCRソリューション担当だった(現在は社会基盤ソリューション事業本部ソーシャルイノベーション事業部デジタルソリューション統括部RPAソリューション担当課長という、それらしい肩書に落ち着いている)。省庁向けにOCRの活動範囲を広げるため取り扱いを始めたWinActorだが、「RPAツール」と名乗ったとたん、民間企業からの問い合わせが殺到した。
億単位も珍しくない大規模SIを得意とするNTTデータにとって、安価なデスクトップツールであるWinActorは、営業的に決して“おいしい”プロダクトとは言えない。反応が良かったので、部門横断的に、様々な業種のユーザーに提案していこうということになったものの、「当初は価格が安いだけに、積極的に提案することを躊躇する部署がほとんどたっだ」(中川氏)という。
ところが、海外製品がほとんどのなか、ネイティブな日本語ソフトであるWinActorへのユーザーの関心は思いのほか高く、「様々な部署が積極的にWinActorを提案するようになった」という。その結果数百台規模で導入するユーザーも現れ、NTTデータとしてはきわめて異質ではあるが、現在では社内で最も注目されているプロダクトの1つに成長している。
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