[市場動向]

NTTが開発した純国産RPA「WinActor」―開発秘話と海外製品との差別化ポイント

2018年7月19日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

オフィスにDigital Labor(デジタルレイバー)が増殖している――当然のことながら人間離れした処理スピードと正確性を合わせ持つのが仮想的知的動労者のデジタルレイバーだ。その卓越した能力は、日本においても多くの企業の生産性向上に寄与している。デジタルレイバーを生み出すRPA(Robotics Process Automation)は、御多分にもれず海外製品が主流となっているが、海外ブランドひしめく中、存在感を示している国産RPAがある。それが「WinActor(ウィンアクター)」だ。

 RPA製品「WinActor」の歴史をさかのぼると、NTTアクセスサービスシステム研究所(ANSL)が開発したUMS(Unified Management Support System)にたどりつく。ANSL R&D TimesやNTTグループの技術誌であるNTT技術ジャーナルで紹介されたのが2011年のこと(図1)。日本にはRPAという言葉も概念もなかった時代だ。

研究所で「UMS」として誕生

 UMSは、「エンドユーザーが作成したシナリオに基づき、操作端末への入出力操作と、業務システム間のデータ連携を自動実行できるソフトウェア」「システム開発の為のコーディング技術を必要とせず」などと説明されており、RPAの特徴を備えていることがわかる。

図1:UMSの利用イメージと構成技術(出典:NTTアクセスサービスシステム研究所「ANSL R&D Times 」第64号)
拡大画像表示

 2013年刊行のNTT技術ジャーナルでは、NTT東日本やNTT西日本傘下のNTTフィールドテクノ、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモなど、NTTグループ内でUMSを業務効率化に活用している事例の数々が紹介されている。

 そして、NTTグループのNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)がこのUMSを製品化し、「WinActor」の製品名で世に出したのが2014年1月。当時は「Windowsアプリケーション操作自動化ツール」として売り出されていた。この製品化されたUMSをリマーケティングし、「RPAツール」として売り出したのがNTTデータだ。同社は2017年1月に推進チームを立ち上げ、本格展開を開始している。

写真1:社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当課長の中川拓也氏

 NTTデータでWinActorの旗振り役を務める中川拓也氏(写真1)の当初の所属は第二公共事業本部のOCRソリューション担当だった(現在は社会基盤ソリューション事業本部ソーシャルイノベーション事業部デジタルソリューション統括部RPAソリューション担当課長という、それらしい肩書に落ち着いている)。省庁向けにOCRの活動範囲を広げるため取り扱いを始めたWinActorだが、「RPAツール」と名乗ったとたん、民間企業からの問い合わせが殺到した。

 億単位も珍しくない大規模SIを得意とするNTTデータにとって、安価なデスクトップツールであるWinActorは、営業的に決して“おいしい”プロダクトとは言えない。反応が良かったので、部門横断的に、様々な業種のユーザーに提案していこうということになったものの、「当初は価格が安いだけに、積極的に提案することを躊躇する部署がほとんどたっだ」(中川氏)という。

 ところが、海外製品がほとんどのなか、ネイティブな日本語ソフトであるWinActorへのユーザーの関心は思いのほか高く、「様々な部署が積極的にWinActorを提案するようになった」という。その結果数百台規模で導入するユーザーも現れ、NTTデータとしてはきわめて異質ではあるが、現在では社内で最も注目されているプロダクトの1つに成長している。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

RPA / NTTデータ / NTTアドバンステクノロジ

関連記事

トピックス

[Sponsored]

NTTが開発した純国産RPA「WinActor」―開発秘話と海外製品との差別化ポイントオフィスにDigital Labor(デジタルレイバー)が増殖している――当然のことながら人間離れした処理スピードと正確性を合わせ持つのが仮想的知的動労者のデジタルレイバーだ。その卓越した能力は、日本においても多くの企業の生産性向上に寄与している。デジタルレイバーを生み出すRPA(Robotics Process Automation)は、御多分にもれず海外製品が主流となっているが、海外ブランドひしめく中、存在感を示している国産RPAがある。それが「WinActor(ウィンアクター)」だ。

PAGE TOP