ストレージベンダーのネットアップは2018年8月2日、市場でのストレージ技術の進化を踏まえた同社の製品戦略を説明した。2018年5月に発表したハイエンドストレージ「AFF A800」では、FC-SANよりも速いNVMe over Fablicを利用できる。2018年後半には、OSのプロトコルスタックの負荷を省いて低レイテンシでアクセスできるようにするソフト「NetApp MAX Data File System」をリリースする。
「ストレージの基盤技術の進化によって、性能のボトルネック箇所が以前とは違うものになってきている」。ネットアップのCTO(最高技術責任者)である近藤正孝氏は、ストレージ市場に起こっている変化を、こう説明する。ネットアップは、こうした状況の変化を受けて、従来とは異なる製品を作っていくとしている。
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これまでとは異なる新しい製品の1つが、2018年5月に発表したオールフラッシュ構成のハイエンドストレージ「AFF A800」である。特徴は、内部のフラッシュメモリーをNVMeで接続しているのに加えて、サーバー機とのSAN(ストレージエリアネットワーク)接続にNVMe over Fablicを採用していることである。
NVMeは、フラッシュのために作られたストレージ接続方法であり、既存のSAS(Serial Attached SCSI)接続よりも低い遅延時間で高速にアクセスできる。一方、NVMe over Fablicは、FC(FibreChannel)-SANと同様にネットワーク接続を介して、SCSIの代わりにNVMeプロトコルを使って通信する。既存のFC-SANと比べてIOPSが60%向上したほか、レイテンシ(遅延時間)が半分になるという。
プロトコルスタックの性能ボトルネックを省く高速ファイルシステム
これまでとは異なる別の製品としては、2018年内に、ファイルシステムソフト「NetApp MAX Data File System」(仮称)をリリースする予定である。買収したイスラエルのPlexistoreの技術をベースにしたもので、Linux XFSなどの他のファイルシステムよりも低いレイテンシで高速にアクセスできる。
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NetApp MAX Data File Systemでは、OSのプロトコルスタックのソフトウェア処理にかかる負荷を省略している。アプリケーションからストレージへのアクセスを、中間にあるソフトウェア処理の多くを省くことで、ダイレクトにストレージデバイスへと渡すようにしている。
背景として同社は、SCM(ストレージクラスメモリー、NANDフラッシュよりも高速な不揮発性メモリー)や、DIMMメモリースロットを介して使う高速なSCMを使う場合、OSのプロトコルスタックが性能のボトクネックになる状況を挙げる。同社によると、NANDフラッシュのレイテンシは100マイクロ秒以下のレベルだが、SCMは10マイクロ秒以下、DIMM型のSCMは300ナノ秒以下のレベルになるという。
PoC(概念検証)環境でFIOベンチマークテストを実行させた結果を示した。レイテンシは、Linux XFSの176μ秒に対してNetApp MAX Data File Systemは4μ秒と、性能差は44倍になった。IOPS(1秒あたりのI/O件数)は、Linux XFSの5.2万 IOPSに対してNetApp MAX Data File Systemは350万 IOPSと、性能差は67倍になった。
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