[市場動向]

NTTデータ、量子コンピュータの金融業務への適用でAIファイナンス応用研究所と協業

2018年8月17日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NTTデータは2018年8月17日、量子コンピュータを金融ビジネスに適用するための検討を開始する。リサーチアンドプライシングテクノロジーのAIファイナンス応用研究所と協業し、同日付けで検討を開始する。協業の実績を基に、金融における量子コンピュータ活用のユースケース実現を目指す。

 NTTデータとAIファイナンス応用研究所は、従来のコンピュータでは性能をはるかに超えた計算負荷を要するために解決が難しい金融課題を解決するため、量子コンピュータを金融ビジネスに適用したシステムの実現に向けて協業することで合意した。互いが持つノウハウを組み合わせる。

 NTTデータは、金融分野のシステム構築の実績と、実ビジネスへの応用検討を通じて培った量子コンピュータに関する知見がある。一方のAIファイナンス応用研究所は、金融市場における資産運用モデルの開発やトレーディング業務を通じ、金融工学や数理技術の知見を持っている。

 量子コンピュータには、特定の種類の問題について最適解を超高速に導き出せるという特性がある。まずは、この特性を生かせる分野として、資産運用業務に適用する。ポートフォリオの資産配分を最適化するシステムや、リスク管理のためのシミュレーションを高速化・複雑化するシステムを検討する。

 ポートフォリオを最適化する方法としては、単純化された前提条件の下で静的に最適解を求めるアプローチがよく知られている。ただし、より現実の運用に即した最適解を求めるには、複数の所有期間、買いと売りの両方のポジション、銘柄入れ替えの取引コストなどといった動的な環境を考慮しなければならない。これを実現するには膨大な回数のシミュレーションが必要であり、従来型のコンピュータでは月、年単位の時間がかかってしまう。

 今回の協業では、量子コンピュータを活用し、従来型のコンピュータの限界を超える高度なポートフォリオ最適化のアプローチを想定し、実現可能性を検証する。これにより、資産運用業務を高度化できるかどうかについて検討する。

 資産運用業務においては、市場リスクや信用リスクといったさまざまな不確実性から生じるリスクを適切に管理することが求められている。複数の条件下における多数のリスクファクター間に存在する膨大なパターンの相互関係について迅速に把握することが理想的である。しかし、従来のコンピュータの処理スピードは、こういった要件に応えるものとはなっていない。

 今回の協業では、複雑な環境下におけるリスク管理のシミュレーションに量子コンピュータを適用する。これまで難しかったモニタリング手法の適用や、より高速な分析の実行など、不確実性の中での優れた意思決定に寄与できるシステム/サービスの実現について検討する。

 なお、今回の協業の背景について同社は、量子コンピュータへの注目度は高まっており、金融領域においても量子コンピュータを活用する可能性が真剣に議論される段階に来ていることを挙げている。

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量子コンピュータ / NTTデータ / 資産運用 / 金融 / FinTech

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