富士通は2018年5月の米Pivotal日本法人とのパートナーシップ契約時に表明していたアジャイル開発の専門施設を、お披露目した。顧客企業にアジャイル開発を伝授したり、チームを組んでアプリケーション開発に取り組む場である。集中して業務に取り組めるよう、この種の施設では”お約束”になりつつあるキッチンや卓球台もある。
「欧米では巨大で官僚的な企業や組織、例えば米国空軍(US AirForce)が、組織文化や人をアジャイルに変えようと取り組んでいます。長年、ウォーターフォール型開発に携わってきた私にとっても、とても印象深い動きです。海外に比べて日本は遅れている感が否めませんが、本日開設するラボを契機にアジャイル開発を加速させます」(富士通の木脇秀己 執行役員常務=デジタルフロントビジネスグループ、写真1)―。
富士通は2018年10月12日、東京・蒲田(大田区)の同社システムラボラトリ内に、アジャイル開発手法やPaaSを駆使してアプリケーションを開発する拠点、「Fujitsu Agile Lab」を開設したと発表した。この5月に発表した米Pivotal日本法人とのパートナーシップ契約を具体化したもので、Pivotalのアジャイル実践施設である「Pivotal Labs」をモデルに、アジャイル開発をサポートするITプラットフォーム「Pivotal Cloud Foundry(PCF)」も導入している。
Fujitsu Agile Labは、顧客企業にアジャイル開発のスキルや文化を伝授したり、共同でアプリケーションを開発したりするための施設。富士通の中村記章デジタルフロントビジネスグループ・エグゼクティブアーキテクト(写真2)は、 Agile Labの目的を「Pivotalのグローバルスタンダードなアジャイル手法やソフトウェアをもとに、顧客企業のデジタル変革を支援します」と語る。実際には、富士通に所属するアジャイル開発のスペシャリストが、顧客のIT担当者やIT技術者とチームを組んでアプリケーションを開発する。それを通じて顧客にノウハウを移転するのが基本だ。
となると富士通側の人材が鍵になるが、すでに富士通はPivotalジャパンが運営するPivotal Labsに自社の技術者を派遣して育成に務めている。25歳から30代前半の若手を中心に現時点で約40人を育成済みであり、さらに増やす考えである。開発するアプリケーションはIoTやAIに象徴されるSoE(Systems of Engagement)に属するものだけではなく、「既存システム(SoR:Systems of Record)のモダナイゼーションやSoRとSoEのインテグレーションにも取り組みます」(中村エグゼクティブアーキテクト)。
米Pivotalは同社のLabsで欧米企業のレガシーモダナイゼーションをサポートしており、富士通もそれを踏襲する。Fujitsu Agile Labの利用料金は、Pivotal Labsを参考にタイム&マテリアルを基本とする考え。ただし日本ではまだ馴染みがない面もあるので、個別に決めるケースもあるという。日本におけるアジャイル開発の大きな壁の1つがユーザーとの契約なので、この点は富士通としても試行錯誤的にせざるを得ないとみられる。
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