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日本野球機構、AIで試合写真に選手名を自動でタグ付け、Azure AIを利用

2018年11月26日(月)日川 佳三、杉田 悟(IT Leaders編集部)

一般社団法人日本野球機構(NPB)は、各球団が所有する写真資産を一元的に管理するサービス「NPB CIC」(Contents Images Center)を強化し、プロ野球の試合写真に写っている選手に選手名を自動でタグ付けするAI機能「選手名情報自動タグ付け機能」を追加した。2018年6月から広島東洋カープなど5球団で試用を開始した。2019年にはNPB CICを導入している全球団が利用する。AI機能を提供した日本マイクロソフトが2018年11月26日に発表した。

 日本プロ野球のセントラル・リーグとパシフィック・リーグを統括するNPBは、各球団が所有する写真資産を一元的に管理するNPB CICサービスを提供している。各球団の外部への写真貸出・請求管理なども、業務サポートの一環として行っている。

画面1:「選手名情報自動タグ付け機能」の操作画面(出典:日本マイクロソフト)画面1:「選手名情報自動タグ付け機能」の操作画面(出典:日本マイクロソフト)
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 写真の貸出にあたっては、写真利用者が検索しやすいように各写真に写っている選手を特定し、タグ付けしておく必要がある。これまでは、多い時ではプロ野球1試合あたり3000枚の写真の中から300枚程度の写真を選別し、各球団関係者が試合終了後約4時間かけ、マニュアルで選手の特定と選手名のタグ付けを行ってきた。

 今回、AIを使って写真に選手名を自動でタグ付けできるようにした(画面1)。写真解析には、マイクロソフトの学習済みAIであるMicrosoft Cognitive ServicesのFace APIを活用した顔認識、富士フイルムイメージングシステムズが独自に開発した選手のポーズや利き手を判定する技術、NPB BIPを組み合わせて、Microsoft AzureのDuable Function技術で分散処理を行う。

 NPB BIPは、野球に関わるデータを分析可能なように加工して集約してある、研究開発用のプラットフォーム。試合が行われた日付や時間、出場選手、ポジション、背番号、利き手など、判定に必要な特定のデータをここから得ることができる。

 今回開発したAIを使うと、選手の顔が写っていない斜めや横から撮影した写真であっても、「打撃」「投球」「守備」「走塁」の4つのシーンを分類したり、選手名を推定したりできる(画面2)。さらに、「Azure Durable Functions」を活用して処理を高速化していることで、マニュアルによる最終的な確認作業も含めて30分程度で処理を完了できるようにした。

画面2:「選手名情報自動タグ付け機能」の認識結果(出典:日本マイクロソフト)画面2:「選手名情報自動タグ付け機能」の認識結果(出典:日本マイクロソフト)
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 NPB CICは、富士フイルムイメージングシステムズのクラウド型ファイル管理・共有サービス「IMAGE WORKS」を基盤として利用している(図1)。AIを用いた写真画像へのタグ付け機能は、IMAGE WORKS全体で利用できる。今後は、プロ野球だけでなく他の野球団体や野球以外のスポーツでの本機能の利用、一般企業のコンテンツ活用への展開、さらにビデオ分析機能「Azure Video Indexer」を活用した動画解析なども視野に入れている。

図1:IMAGE WORKSにおける「選手名情報自動タグ付け機能」の処理の流れ(出典:日本マイクロソフト)
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 日本マイクロソフトは、研究開発機関である米Microsoft Researchが開発したニューラルネットワークモデル「ResNet」を提供するとともに、IMAGE WORKSの開発元である富士フイルムソフトウエアと複数回にわたりハッカソンを開催し、検証を重ねてきた。これにより、選手名の推定精度を認識率90%以上まで高めた。

 今回、広島東洋カープをはじめとする5球団が試用を開始し、これまで約4時間かかっていたタグ付け作業が約30分に短縮されたという結果が出ている(図2)。

図2:今回の取組により成果(出典:日本野球機構)

 2019年のシーズンから、現在NPB CICを導入している9球団がこの機能を利用する予定となっているが、現在、福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズ、オリックスバファローズの3球団がNPB CICを未導入となっている。

 NPB 総合企画室参与の吉田伸記氏によると、「もともとNPB CICは6球団から始まり、徐々に参加球団を増やしている段階。未導入の球団は、すでに同様のサービスを自営しているためこれから移行を行う球団や、写真の管理体制が整っていない球団」。すでに残りの3球団からもサービスへの理解は得ており、「数年後には全12球団が導入する予定だ」としている。

 今後は、過去の画像をアーカイビングして商品化するほか、映像データへの貸し出しサービスの拡張、B2Cへの展開などを進めていき、プロ野球の画像・映像コンテンツを資産として永続的に管理・活用していきたい考えだ。

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