フリマアプリ「メルカリ」のサービスを運営しているメルカリは2019年3月28日、説明会を開き、同社のサービスにAI(人工知能)をどのように活用しているのかを紹介した。主に、手間をかけずに商品を売れるようにするため、AIを活用している。AIの活用例として、(1)写真を撮るだけで出品できるようにする「AI出品」(2017年10月開始)と、(2)製品名が分からない時に写真から製品を検索できる「写真検索」(2019年3月開始)の2つについて説明した。
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メルカリは、AIを活用して出品を簡単にすることに注力している。「売ることを空気に」したいと、メルカリ取締役CPOの濱田優貴氏(写真1)は言う。AI企業としてのメルカリの強みとして濱田氏は、メルカリのサービスを介して得た大規模なデータセットと、豊富なAI人材を挙げる。
大規模なデータセットについては、サービス開始から6年を経て蓄積した、数十億を超える商品データがある。メルカリを利用したユーザーが投稿した、累計出品数11億品超の写真画像や説明文である。これをディープラーニングで学習している。これにより、ある写真画像と類似した商品のデータを得られるようにしている。
AI人材については、現在、データ収集とモデル作成に携わるML(マシンラーニング)エンジニアが約20人、作成したモデルを運用するシステム構築・運用エンジニアが約10人、合計で約30人のエンジニアを抱えている。2019年4月には新卒10人を追加し、2019年9月には新卒20人を追加する。
写真を撮るだけで出品できるようにする
説明会では、AIの活用例として、2017年10月から運用しているAI出品の機能について説明した。出品時に登録した商品の写真画像から、商品の内容などの入力候補を提示する機能である(図1)。タイトル、カテゴリ、ブランドを推定し、これらを手動で入力する手間を省く。価格についても、どのくらいで売れるかを示してくれる。
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出品を極限まで簡単にする、とメルカリは言う。あらゆる商品を、写真だけで出品できるようにしたいとしている。次期アプリのプロトタイプでは、スマホをモノにかざすだけでモノを認識し、出品価格を表示する。この流れで、そのまま出品できる。現在でも、書籍やゲームソフトなどの識別が容易なものについては、写真だけで商品説明まで自動で入り、1分以内で出品できる。
AI出品では、AIの活用方法に工夫を凝らした。ディープラーニングだけでは商品カテゴリやブランドの増減・再構築のたびに再学習が必要になるため、ディープラーニングで学習させたモデルを活用しつつ、k-近傍法を組み合わせた(図2)。「ディープラーニングの運用面の弱点を古典的な手法でカバーしている」(メルカリでエンジニアリングマネージャーを務める山口拓真氏)。
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AI出品に次ぐAI活用例として、2019年3月に写真検索機能をリリースしている。製品名や商品説明などの検索ワードが分からなくても、写真を撮るだけで似ている商品を検索できるサービスである。商品カテゴリ、ブランド、柄などを認識できるように学習したディープラーニングのモデルを利用する。
写真検索については、スマートフォン側でディープラーニングの学習モデルを実行するエッジコンピューティングも検討しているという。これにより、モデルに入力する写真画像をクラウド側に転送する必要がなくなる。クラウドには、モデルが出力した数値表現を送信する。これにより、画像を転送する通信負荷を軽減できるほか、クラウド側での推論にかかる処理負荷を軽減できる。