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[ITプロジェクト成功の要件「7つの行動特性」を理解する]

ITプロジェクトの成功事例に共通する「正しい要求定義」とは:第2回

2019年4月2日(火)野々垣 典男(プロメトリスト 代表)

前回は、ITプロジェクトの成功率をテーマにした修士研究で、システム発注者の7つの行動特性「PROMETList」(プロメトリスト)をどのように導出したのか、および行動特性1「P:IT人事・IT人材育成」について説明した。今回はその続きとして、「行動特性2「R:ビジネスとITとの関連性理解」と行動特性3「O:IT組織・体制構築」についてそれぞれ説明する。

行動特性2
R:ビジネスとITとの関連性理解―要求定義を「正しく」行う

 企業は、ビジネス上のさまざまな課題を解決する手段としてITシステムを導入する。導入プロジェクトにおいてIT部門は、システムへの要求をとりまとめた後に、システム化するスコープを確定させることになる。そのフェーズでは、システム化の対象となる業務を理解して的確な要求を確定する必要がある。

 前回(IT発注者に求められる7つの行動特性「PROMETList」を編み出した理由:第1回)に述べたように、筆者は慶應SDMにおける修士研究の中で、ITプロジェクトの受発注にかかわる計20名の有識者にインタビューを実施している。その貴重な知見から生まれたのが発注者行動特性7要素「PROMETList」である(図1)。インタビューでは、「ITプロジェクトはこのフェーズが最重要であり、業務を熟知した発注側のメンバーが積極的に関与すべきフェーズである」ということを多くの方々が発言した。

図1:発注者行動特性7要素「PROMETList」(プロメトリスト)
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 もちろん、経営者自らがシステムへの要求を取りまとめる作業に直接かかわることはまれである。しかしながら、このフェーズが最重要であることを経営者は認識しておくべきであり、それに耐えうる体制を構築し、要求を提示するスキルを持つ発注側のメンバーをプロジェクトに参画させる必要がある。

 また、システムで実現しようとする要求は、ビジネス上でベネフィットが得られる要求に限られるべきである。要求の絞り込みは、業務を熟知した発注側メンバーが主体的に取り組む作業であり、安易にベンダーに委託すべきでないことは言うまでもない。

 しかし、実態としては、特に既存システムを刷新するプロジェクトにおいて、現行システムが保有する機能の必要性を十分に検討せず、安易に「◯◯機能については現行どおり」の一言で片づけてしまい、その機能がどの程度使用されているのか、ビジネスにとってのベネフィットはどのくらいなのかをまったく検討しないことが多い。

 その結果、開発規模が膨れ上がっていく。仮にITコスト削減のために、ERPやSaaSを利用することを前提とすると、多くのカスタマイズ事項によって、結果的に開発費用を増大させることになり、ITコストは削減どころかますます増大してしまう。

 さらに悪いことに、ビジネスを司る事業部門が要求定義に主体的に関与せず、IT部門やIT子会社、ベンダーに任せ切ってしまうことで「事業部門不在」の要求が作り上げられる。その結果、完成したシステムをユーザーが検証する段になって、使えないシステムになってしまっていることに気づく。後の祭りである。

成功事例に共通する行動特性

 それでは、筆者が件のインタビューで得た、大規模ITプロジェクトを成功させた経営者たちの知見をここでいくつか紹介したい。

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