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[ITプロジェクト成功の要件「7つの行動特性」を理解する]

「発注者の主導と当事者意識」なくしてITプロジェクトの成功はない:第3回

2019年4月11日(木)野々垣 典男(プロメトリスト 代表)

筆者が慶應SDMの修士研究で得た、ITプロジェクトを成功させるシステム発注者の7つの行動特性「PROMETList」について解説している。前回は、行動特性2「R:ビジネスとITとの関連性理解」と行動特性3「O:IT組織・体制構築」について説明した。今回は、行動特性4「M:プロジェクトマネジメント」と行動特性5「E:当事者意識」について説明する。

行動特性4
M:プロジェクトマネジメント─ベンダーに依存せず発注側がリード

 本連載の第1回第2回で、発注者行動特性7要素「PROMETList」(図1)を第1・第2・第3までの行動特性を順番に説明してきた。

 第4の行動特性を「Mプロジェクトマネジメント」と命名したが、プロジェクトマネジメントの国際標準フレームワークであるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)に準拠して、厳格にテクニカルなプロジェクトマネジメントを発注者が実施すべき、という意味ではないことを最初に触れておく。

図1:発注者行動特性7要素「PROMETList」(プロメトリスト)
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 そもそも、PMBOKやP2M(注1)といった古くからあるプロジェクトマネジメントのフレームワークは、「プロジェクト」というものが世の中に現れると同時に制定されたものではなく、ITプロジェクトのみならず、建設やプラントなどさまざまなプロジェクトの中から、プロジェクトを成功させるのに有効な実務慣行やノウハウなどを知識体系化したものであり、その進化に伴って順次改定されてきた。それが今やプロジェクトマネジメントは「ISO 21500:2012」として国際標準化されると共に、日本においても2018年に「JIS Q 21500:2018」として規格化されている。

 こうしたフレームワークの制定以前からプロジェクトは存在しており、かつては発注側がプロジェクトのオーナーとしてプロジェクトマネジメントを担ってきた。しかし日本のITプロジェクトは、1980年代半ばからシステムインテグレーターがシステム開発全体を「一括受注」するような業態として発展してきたために、本来は発注側が実施すべき管理項目についてもベンダーに依存するようになり、挙句の果てにはベンダーへの「丸投げ」が横行することになった。

 しかし、筆者が慶應SDMの修士研究で有識者インタビューを行ったところ、大規模ITプロジェクトを成功に導く経営者は、プロジェクトマネジメントの重要性を理解し実行しているということが判明した。

注1:P2M(Program & Project Management for Enterprise Innovation)は、財団法人エンジニアリング振興協会が通商産業省(現・経済産業省)から委託を受けて2001年に策定・発行したプロジェクトマネジメントのフレームワーク

プロジェクトマネジメントの主導者はだれか

 もちろん、インタビューに応じてくれた経営者が異口同音にプロジェクトマネジメントの重要性を述べた訳ではない。筆者が行ったのは「非構造化インタビュー」という手法だ。これは、例えば「プロジェクトマネジメントは重要だと思いますか?」といったような事前に用意した質問事項を順番に答えてもらうのではなく、「プロジェクトを成功させるには、発注者はどのようなことに心がけるとよいですか?」といった尋ね方をして、自由に答えてもらった回答の中から情報を引き出す手法である。

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