[調査・レポート]
「パブリック」優先で「マルチ」がクラウド活用の趨勢─State of the Cloud Report 2019解説[前編]
2019年5月28日(火)西浦 詳二(SoftwareONE Japan シニア・ダイレクター/FinOps Certified Practitioner)
米RightScaleの年次クラウドサービス調査レポート「State of the Cloud Report」をご存じだろうか。RightScaleはクラウド管理ツールベンダーとして知られているが、同レポートは、自社製品のプロモーション用ではなく、客観的な視点から市場・分野動向をまとめた有用なレポートで、しかも無料で入手できる。本稿では2回にわたって、最新レポートである2019年版のポイントを、所見を加えながら解説する。
●後編はこちら:IaaS/PaaS、プライベートクラウド、コンテナの世界利用動向から見えてくるもの─State of the Cloud Report 2019解説[後編]
State of the Cloud Reportは2019年版で8回目を数える。クラウドサービスの登場初期から定期的、継続的な調査を重ねており、時系列的な経過を追うこともできる。
2019年の同調査は、RightScaleが2018年に米フレクセラ・ソフトウェア(Flexera Software)に買収されたため、レポートのタイトルが「RightScale State of the Cloud Report 2019 from Flexera」となっている。とはいえ、調査手法、内容ともに前回までのものを踏襲して一貫性が保たれており、調査結果の前年比較ももちろん可能だ。以下、本稿では、2019年調査に示された、パブリッククラウドやプライベートクラウド、マルチクラウドの構築や運用にまつわる世界的な全般傾向を取り上げる。
State of the Cloud Report 2019の調査概要
State of the Cloud Reportは、世界のクラウドサービスの利用者によるWebアンケートの回答を集計している。実施主体であるRightScaleの顧客リストからもアンケートを募っていて、2019年調査は全回答者中、RightScaleユーザーが21%いるが、全体として一般的な意見を反映したレポートと言える。
2019年調査の回答者は1000人超。所属する組織の規模は、従業員数1001名以上が58%、 101~1000名が20%、1~100名が22%となっている。業種は図1のように幅広く、地域別では、北米59%、アジア太平洋19%、欧州16%、その他6%となっている。
回答者の「クラウド習熟度」も尋ねており、規模と年数で分類している。ハイレベル(32%)、中レベル(31%)、初級(16%)、未着手/計画中(13%)となっている。2018年版と比較すると、ハイレベルに位置する回答者の割合が増加している。
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回答者の84%がマルチクラウドで利用
最初に、回答者が複数のクラウドサービスをどのように利用しているかの状況を見てみる。2019年版の結果では、回答者の84%がマルチクラウド環境でクラウドサービスを利用していると回答した。
図2はその内訳で、パブリッククラウドとプライベートクラウドが混在するハイブリッドクラウドが58%を占め、複数のパブリッククラウド(17%)、複数のプライベートクラウド(9%)の各回答を引き離している。2018年調査との比較でハイブリッドクラウドは51%だったので、7ポイントも上昇している。
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図3は、企業におけるクラウドサービスの種類の優先順位づけである。パブリッククラウド(31%)、ハイブリッドクラウド(28%)が上位につけており、明らかなパブリッククラウド優先のトレンドが見てとれる。パブリッククラウドに対する今後1年間の支払額も、平均で24%の増加が見込まれている。これはプライベートクラウドの実に3倍にあたる。
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●Next:クラウド化推進組織の設置状況と役割、事業部門との“温度差”
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