電気自動車、自動運転、カーシェアリング、コネクテッドカーなどの技術革新もあり、自動車産業は「100年に1度の大変革時代」を迎えている。2019年7月19日、テラスカイの年次イベント「TerraSky Day」の基調講演で、トヨタ自動車 コーポレートIT部 販売マーケティングシステム室 室長の度会裕志氏が登壇し、デジタルで大変革時代に臨むトヨタの取り組みを紹介した。
トヨタ自動車では、2016年からデジタル時代を見据えたITシステムの刷新に取り組んできた。その背景に、急激な技術革新で変貌を遂げようとしている自動車業界全体の大転換がある。
トヨタ自動車 コーポレートIT部 販売マーケティングシステム室 室長の度会裕志氏(写真1)は、「新しいライバルたちと新しい競争ルールで、生きるか死ぬかの戦いが始まっている」という。
トヨタが現在掲げる「モビリティカンパニー」への転換。未来を見据えたシステム刷新がまさに今行われているところだ。
スタッフ減少に営業効率向上で対応
トヨタグループでは、少子高齢化の影響で販売店の営業担当者やサービススタッフが減少している。そのため、営業効率を向上させることが大きな命題となっている。一方で顧客接点にも変化が見られる。販売店やダイレクトメールといった従来の接点に加え、スマホアプリやネット上での手続き、SNSの活用などタッチポイントが増えている。
そういた新しいタッチポイントからの顧客情報は、そのままデータとして蓄積できる。これらのデータが活用できる新たなデジタル営業基盤が、営業活動の効率化をもたらす。ペーパーレス化を実現し、モバイルを使ったセールス活動を可能とする。
様々なタッチポイントから得たデータは地域別に分析する。また、個々のユーザーが何を要求しているのかも分析する。その結果を、法人向けの新たなソリューションサービスの開発や個人向けのカーシェア展開などにつなげる。そして、クレジットカードや損害保険、運輸、観光などとの異業種連携を通じて新たなモビリティソリューションを提供していくというシナリオを描いている。
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いざ、デジタル変革を進めるとなると既存のポートフォリオとどう向き合うかが問題となってくる。営業活動プロセスには、デジタル変革とは関係のない課題がたくさん残されている。システム面では、巨大なレガシーシステムが立ちはだかる。一緒に変革を進めるべきパートナーについても、ビジネスの変化に対する理解がなかなか得られない。
高い拡張性と小回りで変革に備える
そこで、開発のあり方について方針を立てた。古いシステムはあえて残し、新しいシステムと一旦共存させることにした。そのうえでシステムのレイヤー化、モジュール化を図り、システム連携はマイクロサービスやAPIで疎結合する。新しいアプリケーションやサービスは、自分たちで作るよりも、あるものを買ってくる。システムはカスタマイズ性を重視する、といったものだ。
具体的には、レガシーシステムを置き続けながら、新たな基盤としてセールスフォースプラットフォームを採用した。レガシーとクラウドの連携基盤としてAWSと、DataSpider Cloudが用いられている(関連記事:トヨタ販売会社280社、Salesforce営業支援システムと基幹システムの連携にDataSpiderを採用)。「これで、高い拡張性と小回りを合わせ持ち、次来る変革に備えることができた」としている。
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