[ユーザー事例]

組織横断分析から営業部門のKPIを導出─ベックマン・コールター・ジャパンのデータ経営

2019年7月26日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

臨床検査機器のグローバルメーカーであるベックマン・コールター・ジャパンが自社のBIプラットフォームを刷新したのは3年前のこと。サイロ化された複数部門システムのデータに分析をかけて、営業部門の定量的なKPIを得るという目的からだ。現在では、もっと幅広い領域での活用にも可能性を見出しているという。同社ダイアグノスティックス経営企画部部長の加藤亮氏に、BIプラットフォームの活用状況や展望を聞いた。

──ベックマン・コールターは、どのような会社なのか教えていただけますか。

 ベックマン・コールター(Beckman Coulter)は世界的な臨床検査機器メーカーとして知られていますが、実際には、臨床検査とライフサイエンスという2大分野で成り立っています。私が所属するダイアグノスティックスは臨床検査の部門です。親会社は米ダナハー(Danaher)という産業機器メーカー。買収による規模拡大が基本戦略で、買収した会社に独自の経営手法を展開し、事業を立て直してきたことで知られています。ベックマン・コールターがダナハーに買収されたのは、2011年のことです。

写真1:ベックマン・コールター・ジャパン ダイアグノスティックス 経営企画部 部長/DBSリーダー 加藤亮氏

──ダナハーの下で経営の変革がなされたわけですね。

 はい。ダナハーはDBS(ダナハー・ビジネス・システム)と呼ばれる経営手法を確立しています。世界的に「カイゼン」として知られるトヨタ生産方式の考え方を取り入れたものです。トヨタ生産方式のリーン(無駄のない)で制度化されたプロセスを実行していくという考え方のもと、製造領域だけでなく、セールスやマーケティングの領域でも適用できるようタナハーが独自に体系化したものがDBSです。日本の製造業やサービス業にとって「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」の「5S」はあたりまえとなっていますが、ダナハーのファンダメンタル(基礎的事項)に5Sが含まれているのは、そのためです。

 DBSでは、ダナハーが買収した企業の良い部分を取り入れた定義やプロセスの考え方をツール化しています。傘下の企業は、そのツールを自分たちの部門やプロセスに適用させていくことで、改善を図っていく仕組みとなっています。ただし、あくまでもパフォーマンスを最大化するためのベストプラクティスとして提供されているもので、標準化を図るためのものではありません。

定量的なKPIを得るためにBI導入を検討

 DBSで提供される営業向けツールの1つに、商談管理などに使う「ファネルマネジメント(Funnel Management)」があります。このツールでは、「基本的に押さえるべきポイント、セールスで見るべきKPIは、こういう考え方で捉えるべきですよ」ということが決められています。ここでは定量的なKPIが必要となるのですが、それを得るためには、毎月、毎週、毎日、様々なデータを収集して可視化していく必要があります。ところが各部門では自分たちの使いやすいシステムをそれぞれに導入しています。このサイロ化したシステムをつなぐ仕組みが不十分でした。

 各部門のシステムに点在した顧客情報を一元管理し、クロスファンクショナルに分析するためには、部門やシステムの壁をぶち壊す必要がありました。その役割を期待されたのがBIツールでした。

──導入したBIはドーモのデータ活用プラットフォーム「Domo」ですね。選んだ理由は何でしょう。

 もともとダナハーの米国本社の一部でDomoを使っており、一時グループの推奨ツール的な位置づけにありました。ところが本社では運用に失敗してしまい、うまく使いこなせませんでした。現在でも使っていますが、運用の範囲は限られたものとなっているようです。

 実際、BIツールに関しては、国や部門によってバラバラです。TableauやQlikなども使われていますが、Office 365をグローバルで導入している関係で、Power BIがファーストチョイスという風潮もあります。

 ベックマン・コールター・ジャパンでもPower BIを検討したのですが、2015年当時、まだ発展途上という感覚が拭えませんでした。そんな中、日本のライフサイエンスのトップがDomoを見て、導入したいと言い出しました。私の前任者が、ダイアグノスティックスでも活用できるのでは、と声をかけ私どものグループでも導入が一気に進んだのです。

──導入にはどのくらいの期間を要しましたか。

 ライフサイエンスは2015年11月に契約し、2016年1月にはダイアグノスティックスでも導入することが決まりました。それから1カ月半で導入し、2月下旬から営業のマネージャーを中心に使い始めました。1月は期初なのでKPIを変えるタイミングでもありました。新しいKPIに合わせてBIを導入した格好です。導入作業はそれなりの工程を必要としましたが、可視化したいアウトプットのイメージとデータがどこにあるかさえ把握できていれば負担にならず、比較的スムーズに導入できたと思います。

●Next:導入3年でBIツールの使い方はどう変わった?

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

Beckman Coulter / Danaher / Domo

関連記事

トピックス

[Sponsored]

組織横断分析から営業部門のKPIを導出─ベックマン・コールター・ジャパンのデータ経営臨床検査機器のグローバルメーカーであるベックマン・コールター・ジャパンが自社のBIプラットフォームを刷新したのは3年前のこと。サイロ化された複数部門システムのデータに分析をかけて、営業部門の定量的なKPIを得るという目的からだ。現在では、もっと幅広い領域での活用にも可能性を見出しているという。同社ダイアグノスティックス経営企画部部長の加藤亮氏に、BIプラットフォームの活用状況や展望を聞いた。

PAGE TOP