IDC Japanは2019年9月18日、世界の人工知能(AI)システムに対する支出額の予測を発表した。AIシステムに対する支出額は、2023年に979億ドルに達する見通し。これは、2019年の支出額である375億ドルの2.5倍以上に相当する。2018年から2023年までの年間平均成長率(CAGR)は28.4%である。米IDCが2019年9月4日に発表したリリースの日本語訳をベースとしている。
AIシステムへの支出額が最も大きい業界は、小売と銀行である。2019年の投資額は、どちらの業界でも50億ドル以上の見込みである。小売業界における支出額の約半分は「自動顧客サービスエージェント」と「エキスパートショッピングアドバイザー」に費やされる。銀行業界では、「自動脅威インテリジェンス/予防システム」と、「不正行為分析/調査」に投資が集中する。
AIシステムに対して大幅に投資するこれ以外の業界には、組立製造、プロセス製造、ヘルスケア、専門的サービスがある。支出の伸びが最も大きい業界は、メディアおよび政府機関である。5年間のCAGRは、メディアが33.7%、政府機関が33.6%である。
AIシステムのユースケースの上位3つは、「自動顧客サービスエージェント」、「自動脅威インテリジェンス/予防システム」、「自動営業プロセスリコメンデーション」である。これらを合わせると、2019年における支出額全体の25%を占める。この次に続く6つのユースケースを合わせると、2019年の支出額の35%になる。
2018年から2023年までの予測期間中、成長率が最も高いユースケースは、HR(人材)オートメーション(CAGRは43.3%)と、医薬品研究開発(CAGRは36.7%)である。ただし、5年間のCAGRが30%を超えるユースケースは、これら以外にも8つある。
テクノロジー別に見ると、2019年の支出額でシェアが最も大きいのは「サービス」(主としてITサービス)である。企業におけるAIプロジェクトの設計・実装にあたって、外部の専門知識が必要になるからである。
ハードウェアの支出額は、企業におけるAIインフラストラクチャ構築を背景に、2019年の時点ではソフトウェアの支出額をやや上回る見通し。しかし、予測期間の終わり頃には、AIソフトウェアおよびAIソフトウェアプラットフォームの購入額が、ハードウェアを追い越す。ソフトウェア支出額のCAGRは36.7%になる。
地域別に見ると、米国は小売と銀行を中心に、予測期間中におけるAI支出額全体の50%以上を占める。2番目に支出額が大きい地域は西ヨーロッパで、銀行および組立製造が牽引役となる。3番目にAI支出額が大きい地域は中国で、小売、自治体、専門的サービスが上位を争う。5年の予測期間中、最も強力な支出拡大が見込まれるのは日本(CAGRは45.3%)と中国(CAGRは44.9%)である。
調査結果をまとめた「Worldwide Artificial Intelligence Systems Spending Guide」 は、9つの地域および32カ国における19の業界を対象に、26のユースケースに関するデータを提供し、AI関連のビジネス機会を数量化している。なお、IDC Spending Guideは、主要テクノロジ市場の動向を、地域、産業、ユースケース、バイヤー、テクノロジの観点から分析しており、ピボットテーブル形式またはカスタムクエリツールによるセルフサービス型サービスとして提供している。